脳は複雑な神経回路を形成しその機能を営んでいます。その基本となる構造が神経細胞と神経細胞の橋渡しをする「シナプス」と呼ばれる構造ですが、そのシナプスの働きの良し悪しが、脳機能の働きの良し悪しに直結しています。
すなわち、ある情報が脳神経細胞に入ると、シナプスで神経伝達物質が放出され、次の神経細胞の受容体で神経伝達物質を受け取り伝達されていきますが、この伝達がうまくなされなくなったときに脳機能が低下した状態と診断されることになります。
従って、脳機能を維持するためには、
[1] 減少してきた神経伝達物質を増やす
(1)シナプスからの神経伝達物質の放出を刺激する
(2)神経伝達物質の分解を防ぐ
(3)神経伝達物質の合成を促進する
[2] 放出された神経伝達物質をうまく受け取る
(1)神経伝達物質の受容体の反応を高める
(2)神経伝達物質の受容体の数を増やす
などが考えられます。
現在、認知症治療薬として最もよく使用されているドネペジル塩酸塩(商品名;アリセプトなど)は、脳内でコリンエステラーゼという酵素の働きを阻害し、神経伝達物質の代表格「アセチルコリン」の分解を防ぐ働きがあります。([1]の(2))
一方、認知症治療薬開発の段階で発見されたPOホスファチジルコリン・DLホスファチジルコリンは、神経伝達物質のアセチルコリンの量を増やし([1]の(3))、さらにはアセチルコリン受容体の働きをよくする([2]の(1))働きがあるという研究結果が出ています。これらのことからドネペジル塩酸塩とPOホスファチジルコリン・DLホスファチジルコリンとの併用によって、さらに有用であることが予想されます。
実際に、ドネペジル塩酸塩とPOホスファチジルコリン・DLホスファチジルコリン配合サプリメント「エグノリジンS」とを併用して認知症が改善された、80歳女性の例をご紹介します。
ある日「かばんが無くなった」ということで朝から探して泣いていたところを家族が見つけたことをきっかけに、日に日に様子が変だと周りでも感じるようになってきたそうです。
また、買い物に出かけては、同じ商品を考えられないくらいにたくさん買ってきて家族に見せてはニッコリ笑うこともあったそうです。
その後は、毎日のように「通帳が無くなった」、「印鑑が無くなった」と言い、家族が隠したということで家族に八つ当たりするようになり、さらには自分で鍵屋さんを呼んでは部屋のカギを毎日変えるようになりました。
業者の方もさすがに、何度も鍵の交換が続くと普通じゃないと感じるようになり、家族に連絡をとってその事実が判明したそうです。
そこで大学病院を受診させたところ「軽度認知症」と診断されドネペジル塩酸塩が処方されたそうです。
この時の家族の感想は「これで軽度なの?中等度になるとどうなるのだろう」と不安の方が先に立ったそうです。
ドネペジル塩酸塩を飲み始めて数か月、まったく状態は変わらない様子でしたが、その時に当社に相談を頂き、「エグノリジンS」を飲用することになり、その3~4ヶ月後にうれしい報告が舞い込んできました。
「以前のように普通の生活ができるようになった。今までの認知症の様子が嘘のようだ」との事でした。
これはほんの一例に過ぎませんが、作用機序から考えても、併用することにより一層有用性が高まることが期待できるように思いますので、参考までにご紹介させていただきました。
「医薬品を使用するか、サプリメントを使用するか」というようにどちらか一方を選択しなければならないことはありません。上記の例のように併用することにより有用性が高まることも大いに考えられます。がん患者さんの場合は、健康食品を併用することで抗がん剤の副作用の軽減に大いに役立っています。その方にとって一番良い選択肢を考える、それが統合医療(補完代替医療)の基本的な考え方だと思います。