「体内時計と健康の関係」については、2018年8月号のくすりの話でご紹介していますが、今回はその第二弾をお伝えさせていただきます。
春になれば「桜の開花」や「うぐいすの鳴き声」などで春を感じるなど、四季を肌で感じることができますが、一方で、人間の知恵によりエアコンの使用などで1年中快適な環境で生活できたり、旬の食材を1年中食べられる時代になってきたことなどにより、季節を肌で感じる機会が少なくなってきました。
しかし、自然界に生息する動物にとっては、四季の環境の変化によって食料が変化するため、環境の変化に適応できるかどうかは死活問題にもつながります。
季節を感じる以外にも、私たちの生活の中で昼夜の環境の変化にも適応していくことも大切で、体内時計が存在していることも知られています。
海外旅行などで経験する「時差ぼけ」も体内時計の狂いが原因となりますが、最近の研究では体内時計の不調が様々な病気とも関わっていることもわかっているのは以前にもお伝えしたとおりです。
体内時計のしくみについての研究では、2017年にはノーベル生理学・医学賞が授与されおり、脳の視床下部にはオーケストラの指揮者の役割のように「親時計」があり、全身の細胞に存在する「子時計」を制御していることがわかっています。
上述の時差ぼけを例にとると、「親時計」は比較的早めに現地の時間に同調できますが、子時計が同調できるまでの時間に差ができるために時差ぼけが発生すると言われています。
寝る前にスマホを見ない方が良いと言われているのは、ブルーライトが体内時計を狂わせて睡眠障害につながるためです。
最近の研究から、マウスに慢性的に時差ぼけを経験させると寿命が縮まったり、腫瘍の成長が加速されたりすることがわかりました。
人における体内時計の狂いは、睡眠障害はもちろんの事、糖尿病、肥満、心疾患、がん、うつ病など様々な疾患と関連します。
冬には眠りが深く、夏は眠りが浅くなることや、冬にうつ症状やだるさなどの精神症状が出やすいのは、日照時間の違いに影響を及ぼしているからと考えられます。
今まであまり注目されなかった「体内時計」をコントロールして病気を治療する治療薬の開発も試みられており、今後の研究の進展によっては、この分野での医薬品が登場する日も近いかも知れません。
いずれにしても健康を維持していくためには、夜更かしを避けて、日常で自然に光を浴びて、旬の食べものなどを含めた季節を感じながら生活することも大切かも知れません。