2021年9月号の「くすりの話」の中でも腸内環境を整えることの大切さをお伝えしたように、腸内環境と健康には深い関りがあることは研究者の中でも受け入れられるようになってきました。
近年では、「脳腸相関」という言葉も使われるほど研究が進んでいます。
即ち、単に「腸内環境を整える」というだけではく、腸内細菌叢の「質」が問われるようになってきました。
特に、「うつ」や「自閉症」、「ストレス」と言った神経系の疾患と腸内細菌叢の研究がよく進んでいますが、最近では「認知症」との関係も明らかになりつつあります。
例えば、国立長寿医療研究センターの研究では、認知症患者は「バクテロイデス」という種類の腸内細菌が少ないことや、細菌の種類そのものが少ないことがわかっています。
その他にもある種の乳酸菌やビフィズス菌を摂取すると、認知機能を評価するMMSEというスコアが有意に改善されたという報告もあります。
うつ病などの精神疾患と腸内環境との関係では、うつ病の患者は健常者と比べてビフィズス菌や乳酸菌の数が少ないこともわかっています。
さらに自閉症の患者の腸内環境が改善すると症状が軽減したという結果報告もあります。
腸内細菌移植医療という分野が進んでくる予感がしますが、現時点ではまだ研究段階にとどまっているようです。今後、腸内環境と健康の関係の詳細が明らかになるにつれて、一気に腸内細菌移植医療という分野が発展してくるかも知れません。
詳細が明らかになるまでは、とにかく善玉菌と言われる乳酸菌やビフィズス菌をしっかり摂取するように心がけたいものです。