2022年4月、片頭痛急性期治療薬の新薬「ラスミジタン(商品名;レイボー)」が、約20年ぶりに登場しました。
片頭痛の病態は、片側に拍動性の頭痛が繰り返し生じ、頭痛の他にも悪心や嘔吐を伴うことが多く、日常生活のQOLに大きな支障をきたすことがあります。
その原因は、実はまだ解明されていないことも多い中、1980年代に提唱された「三叉神経血管説」が支持されています。
「三叉神経血管説」とは、顔の感覚を脳に伝える神経である「三叉神経」から脳の血管に、CGRPと呼ばれる神経ペプチドなどの神経伝達物質が放出されることにより、脳血管の拡張や血漿タンパク質の漏出が生じて、神経原性炎症を誘発して片頭痛が発生すると言われています。
近年では、片頭痛予防薬としてCGRPに対する抗体医薬品が臨床現場でも使用され、効果を顕していますが、このことからも「三叉神経血管説」が正しい根拠のひとつとなっていると考えられています。
そこで、片頭痛の急性期治療においては、三叉神経からの神経伝達物質の放出抑制、神経原性炎症の抑制、脳血管の収縮などがターゲットとなっており、現在使用されている片頭痛急性期治療薬「トリプタン系薬剤」もセロトニン受容体に作用し、三叉神経からの神経伝達物質の放出を抑制するとともに、脳血管の収縮作用により片頭痛の痛みを軽減しています。
しかし、コントロールされていない高血圧症の患者や脳心血管系の疾患のある患者さんには、安全性の懸念から投与できないことになっている他、トリプタン系薬剤で十分な効果が得られないこともある点が課題でした。
そのような中で、この度なんと約20年ぶりに、血液-脳関門を通過し、トリプタン系薬剤とは異なるセロトニン受容体に作用し、血管収縮作用を有しない比較的安全性の高いお薬「ラスミジタン(商品名;レイボー)」が発売されました。
ラスミジタンは、すでに米国をはじめ世界7か国(2021年12月現在)で承認されている医薬品です。
国内でのラスミジタンの承認により、安全性の面からも一般内科医師も処方しやすい医薬品となることから片頭痛で悩まされている患者さんに朗報となることが期待されます。