11月8日は語呂合わせで「いい歯の日」であることから、日本歯科医師会は11月を歯と口腔の健康づくり月間として口腔内の健康に関心を持ってもらう取り組みを行っています。
口の健康を維持することは、日常生活や全身の健康にも良い影響を与えます。
今月は口の中の健康について、考えてみましょう。
★実はとても重要な口の健康
口腔には、食べる機能や、会話をしてコミュニケーションを取る機能、歌ったり楽器を演奏したりと様々な機能があります。生命維持に一番重要な「食べる」ためには、歯で食物を咬み(咀嚼)、飲み込む(嚥下)という一連の動作が必要です。そして食べ物や飲み物を口に含むと味や食感を感じて満足感につながります。しかし、口の健康が悪化すると下記のような症状が現れます。
●虫歯
虫歯菌と言われるミュータンス菌などが糖分を栄養にして酸を出し、その酸によって歯が溶けている状態です。
放っておくと痛みが出たりして日常生活に影響が出るだけでなく、最終的に歯を失う場合もあります。
●歯周病
歯周病は歯を支える骨や歯肉などに炎症が起きて徐々に破壊されていく病気です。主に細菌感染による炎症が原因で、最終的には歯がグラグラと不安定になり、歯を失う場合もあります。
●咀嚼機能や嚥下機能の低下
虫歯や歯周病の他、口の筋力が低下するなどが原因でうまく噛めなくなったり飲み込めなくなってしまう場合があります。特に高齢者の場合、物をうまく噛めなくなったり飲み込めなくなると、食事で摂るべき栄養が十分に摂れず、低栄養の状態になり、筋力の低下やエネルギーの低下などによって日常生活に支障が出て要介護になるリスクが高まります。
★口の健康が乱れると全身の健康にも影響?!
嚥下機能や咀嚼機能の低下による生活習慣が健康に与える影響もありますが、虫歯や歯周病などがその他の疾患に影響していることも報告されています。
虫歯が進行し、歯髄と呼ばれる歯の中心部の血管から炎症性の菌が入ると、その菌が全身を巡り菌血症を引き起こす場合があります。健康な人であれば免疫力で排除できますが、免疫力が落ちている人や高齢者などの場合は排除しきれずに臓器で繁殖すると、心内膜炎、腎炎、関節炎、皮膚炎などの原因になることが知られています。
また歯周病は糖尿病との関連性があり、糖尿病による免疫低下から歯周病が悪化することから、歯周病は糖尿病の合併症としても認識されており、糖尿病患者に歯周病の治療を行うことで血糖コントロールの指標となるHbA1cに改善が見られることも分かっています。
その他にも、歯周病は、心疾患や慢性腎臓病、呼吸器疾患、骨粗鬆症、関節リウマチ、メタボリックシンドローム、がんなど、さまざまな全身疾患と関連していることが報告されています。歯周病を治療することにより口腔の健康を維持することは、全身の健康維持にとっても重要であるといえます。
★口の健康はこうやって保ちましょう
口腔ケアの基本は、自分自身で行う毎日のケアと歯科医師・歯科衛生士によるケアがあります。
自分で行うケアの代表が毎日の歯磨きです。歯を1本ずつ、歯間や歯茎との間も含めて丁寧に行い、場合によっては薬効成分が含まれた歯磨き剤を使用するのも有効です。
また食事の時は左右両方の歯をバランス良く使ってよく噛んで食べることも大事です。噛むことで唾液の分泌が促されて口腔内を清潔に保てるほか、口腔内の筋力を使うことで咀嚼・嚥下機能の維持にも役立ちます。
また定期的に歯科検診を受けて、歯石の除去などを行うことで、歯の健康維持や歯周病予防にもつながります。
ところで、緑茶に含まれるカテキンはプラーク(口腔内の細菌の塊で虫歯や歯周病の原因になる)を付きにくくする作用があるので、歯の健康が気になる方は、日ごろから緑茶を飲むようにしてはいかがでしょうか。