生活習慣と一言でいってもいろいろ考えられますが、ここでは認知症予防の立場から考えてみたいと思います。
認知症のなかでも最も多いタイプは、「アルツハイマー型認知症」です。
この「アルツハイマー型認知症」は、脳内に「アミロイドβ」と呼ばれるたんぱく質が蓄積することが主な原因のひとつと考えられています。
実は、この「アミロイドβ」の脳内への蓄積は、なんと20年以上もかけて徐々に蓄積していき、「アルツハイマー型認知症」の発症につながると考えられています。
従って、何も症状のない若い世代のときから脳内への「アミロイドβ」の蓄積を防ぐ生活習慣を心がける積み重ねが、将来的な「アルツハイマー型認知症」発症の予防になると考えられます。
そこで脳内への「アミロイドβ」の蓄積を防ぐ生活習慣について、最近の話題も含めてご紹介します。
まずは「睡眠」です。
睡眠不足でも寝すぎでもなく、適切な睡眠時間が良いようです。
ある研究によれば、認知症発症リスクは、7時間の睡眠に比べて6時間以下の睡眠で1.36倍、8時間以上の睡眠で1.27倍という報告もあります。
また、睡眠は時間だけではなく、中途覚醒をなくすなどの「睡眠の質」を高めることも大切であると言われています。
もう一つは、「糖尿病」を発症しないような生活習慣を心がけることです。
即ち、規則正しくゆっくり噛んで食事をすること、栄養バランスの良い食事をすること、甘い食べ物や飲み物を暴飲・暴食しないこと、適度な運動を心がけることなどを実践しながら日常から血糖値をコントロールすることが大切です。
最近の研究で、糖尿病の方はアミロイドβが蓄積されやすいことがわかってきました。
それは、血糖はインスリンによってコントロールされていますが、役割を果たしたインスリンは、インスリン分解酵素で分解処理されます。実はこのインスリン分解酵素は、アミロイドβも分解する作用があり、血糖値が高い状態が続いてインスリンの分泌量が増えると、インスリン分解酵素はインスリンを分解するのに手いっぱいになってしまってアミロイドβの分解まで手が回らなくなるために、脳内にアミロイドβが蓄積されやすくなってしまうことがわかってきました。
最近では、「糖尿病性認知症」ということもわかりはじめており、注意力が低下し、段取りが悪く、ボーっとする症状が特徴的だと言われています。
以上のように生活習慣とアミロイドβの蓄積は密接な関係がありますので、認知症予防のためにも今一度正しい生活習慣を心がけましょう。