食事や運動と並んで睡眠は健康を支える要素の一つで、睡眠をしっかり確保できれば免疫力も高まり病気も治りやすいことが知られています。
睡眠と健康との関わりでは、例えば不眠と認知症の関連性などもよく知られています。
不眠に悩まされている方は睡眠薬を服用することもありますが、いわゆる睡眠薬と呼ばれているものの種類は、実に20種類以上もあり、その使い分けは作用時間の長さ、すなわち超短時間作用型、短時間作用型、中間作用型、長時間作用型に分類して考えられていました。
しかし最近では、メラトニン受容体作動性薬、オレキシン受容体拮抗薬といった新しいタイプの睡眠薬が登場してきたことにより、作用時間の違いで使い分けるのではなく作用機序によって使い分けするようになっています。
その理由の一つとして、ほとんどの不眠症患者さんは入眠困難と中途覚醒を併せ持っている方が多く、いま注目されているポリファーマシーという立場からも多剤併用を避ける考え方が広がってきたこともあります。
特にベンゾジアゼピン系という古くから使用されているお薬の継続服用(超短時間作用型、短時間作用型、中間作用型、長時間作用型の組み合わせを含む)は、中高年齢層の患者では認知機能障害、転倒・骨折のリスクが高くなることが安全性の立場から問題視されていますが、現実には睡眠障害を訴える患者さんに、例えば「長短時間作用型と中間作用型を同時に処方する」医師が未だに多く見受けられることも課題と言われています。
睡眠障害がうまくコントロールできていない患者さんは、睡眠外来などを行っている専門の医師に相談することも良いかも知れません。
そのような背景の中で、昨年度に「健康づくりのための睡眠ガイド2023」が発表されました。
生活習慣病やがんなどの疾患の発症に、「栄養」、「運動」、「喫煙」、「飲酒」が深く関与していますが、その他、「睡眠」も重要な位置づけになることが明確にされ、適切な睡眠により十分な休養を得られている国民を増やすことが目標として掲げられています。
具体的には、1~2歳児は11~14時間、3~5歳児は10~13時間、小学生は9~10時間、中・高生は8~10時間と細かく設定される一方で、成人には6時間以上と大雑把な設定となっています。
これは成人になると睡眠必要時間に大きく個人差が生じることにより、同じ睡眠時間でも影響の度合いも大きく異なることがあるからです。
そこで新たに睡眠ガイドの中で注目されているのが、睡眠時間の長短だけでなく、「睡眠休養感」を指標とする考え方です。
「睡眠休養感」に対するバイオマーカーは今のところありませんので、「睡眠により疲れが取れているかどうか」という感覚的なものになりますが、睡眠時間の確保とともに、最近よく言われている「睡眠の質」の向上が大切ということです。
睡眠は、時間が長ければよいというものではなく、睡眠の質をよくして、目覚めた時に すっきりした感覚が得られることが好ましいということです。
最近では、GABAや乳酸菌飲料、アスパラガス抽出物、PQQなど睡眠の質を向上させると言われているサプリメントも市販されていますが、これらのサプリメントをうまく利用して健康管理に役立てていくことも「睡眠休養感」を得るために良いことかも知れません。