糖尿病の合併症で、失明の恐れもある「糖尿病黄斑(おうはん)浮腫」を治療する点眼薬を、島根大の大平明弘教授(眼科学)らが開発したと発表、米国の眼科専門誌「IOVSペーパーズインプレス」に掲載された。
様々な分子を取り込むオリゴ糖・シクロデキストリン(CD)を活用し、薬剤を目の奥の患部に届ける仕組み。従来の治療法より安全で早ければ3年後に実用化できるといい、試験を続けている。
糖尿病黄斑浮腫は、網膜の毛細血管が血液中の糖分で傷み、水分や脂肪が漏れて網膜の中心の黄斑が腫れる病気。物がゆがんで見え、悪化すると視力が低下する。国内の糖尿病患者約890万人(推計)の4割に発症の恐れがあるとされる。従来は、血管にレーザーを当てて固めたり、ステロイド剤を眼球に注射したりして治療するが、注射ではまれに炎症が起きる。
大平教授らは目薬による治療法を模索するなかで、水に溶けやすく、分子を取り込みやすいCDに着目。CDの内側は水に溶けにくいステロイドでもなじみやすく、目薬に含ませることが可能になった。CDには取り込んだ物質を少しずつ放出する性質もあり、ステロイドの量を調節して、網膜に達する頃に適量が出るよう工夫した。
島根大病院(島根県出雲市)で患者19人に4週間、毎日点眼したところ、うち18人の腫れが軽減し、14人の視力が0・1程度改善した。現在、効き目の違いや副作用の表れ方の比較試験を実施中。大平教授は「目薬の性能をさらに高めたい」と話している。
日本眼科学会指導医で網膜の病気に詳しい山本修一・千葉大病院副病院長の話「従来の治療は合併症の危険もあったので朗報。今後の研究に注目したい」
(2013年6月18日 読売新聞)
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