肝炎といえば、B型肝炎やC型肝炎で代表されるウィルス性肝炎やお酒の飲みすぎが原因で発症するアルコール性肝炎のことと認識されている方も多いのではないでしょうか。
しかし、最近にわかに注目されているのが「NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)」です。
先進国では、発症する方が急増しており、脂肪肝の人の約1割程度が該当するといわれています。
NASHの怖いところは、進行すると肝硬変から肝臓がんを発症することです。
「私は、お酒を飲まないから大丈夫」なんて思っていたら大きな間違いです。
日ごろから食べ過ぎの方や肥満症の方は要注意です。
NASHを引き起こす主な原因は、なんと言っても「肥満」です。
その他、糖尿病、高血圧症、脂質異常症などの生活習慣病の引き金ともなります。
過食や肥満が原因で脂肪肝を発症し、そのまま放置しておくと肝臓が脂肪を分解しはじめて酸化ストレスが加わり肝臓組織が壊れてきます。その後肝臓組織が繊維化を起こしてNASHを発症します。
NASHは、以上のような経緯をたどって発症しますので、予防対策としては、なんと言っても肥満解消のための運動や食事療法(食べ過ぎないこと、野菜や魚類の積極的な摂取、高たんぱく食の積極的な摂取など)です。その他、酸化ストレスを軽減させるための抗酸化食材(ビタミンCやEなど)の摂取などが考えられます。
一方で、NASH発症の原因に関してまだ知られていないことも多く、様々な説が発表されています。
その中でも、最近わかってきた興味深いことのひとつに、腸内細菌叢のバランスの崩れによって腸管
バリアが破綻し、NASHを発症するという説もあります。
腸内細菌叢のバランスの崩れと病気の関係については、最近の研究テーマとして多数取り上げられ、
かなり詳しいことがわかってきましたが、この点については別の機会にお話させて頂きます。
特に、過度な果糖の摂取は腸管バリアの破綻に関与するようです。
果物自体が悪いということではなく、特に子供たちが過剰摂取で問題視されている「ジュースの過剰摂取」は控えるべきと思われます。
すなわち、小さいころからジュースを過剰摂取する習慣により肥満を引き起こし、そこから脂肪肝になり、過度な果糖によって腸内細菌叢のバランスが崩れて腸管バリアが破綻しNASHへ進行するというパターンです。
現時点でNASHの治療薬はありませんので、NASHから「肝がん」への発症のリスクを少なくするためにも、成人になってからではなく、子供のころから生活習慣(特に食事と運動)について「良い習慣」を身につけておきたいものですね。