平成21年3月号のくすりの話で睡眠薬のお話をさせて頂きました。
はじめに少しおさらいをしておきます。
睡眠薬と言えば、「テレビのドラマなどで自殺に使われている」などから、怖いというイメージを持たれている方がまだ多くいますが、最近の薬は依存性(癖になること)が少なく、間違ってたくさん服用しても呼吸中枢に影響を及ぼすことがないため、安全に使用できるようになってきたことをお伝えしました。
さて、国内において睡眠薬を長期服用している方は、なんと成人の20人に1人と言われています。
そのような中で、睡眠薬の長期服用に不安を感じている方が多く、実に長期服用者の中の約45%は独自に断薬(薬を止めること)に失敗しているというデータもあります。
睡眠薬を止められなくなる一番の問題は、「眠れない」という患者の訴えに対して漠然と長期に投薬してしまうことや患者が自分勝手にいきなり断薬をしてしまうことなど減量や休薬の仕方が間違っていることが多いようです。
そこで昨年6月には「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン~出口を見据えた不眠医療マニュアル~」が公開されました。
このマニュアルによれば、漠然と長期服用することを戒め、不眠症は数ヶ月間放置すれば慢性化することがわかっていますので、発症早期に専門医の治療を行うことをすすめています。睡眠薬の服用により眠れるようになった早期の段階であれば、減薬や休薬は可能と言われています。
また、注意すべき点として、不眠治療のゴールは「朝までぐっすり眠れること」ではなく「日中のQOLを高めること」(日中に眠くて活動に支障をきたすことがないようにすること)にあるということを意識することです。
即ち、「眠れない」と訴える患者に対して、安易に睡眠薬を増量したり、薬を追加したりすることはよくありません。このように訴える患者であっても、睡眠時間は短いとしてもぐっすり眠れている方が多いため、患者の日中QOLについてはなんら問題ないこともありますので、医師は患者の日中QOLをよく観察する必要があります。
不眠を放置して慢性化に至る前に専門医により早期治療を行うことが最も大切なことですが、一方で平成21年3月号でも記載したように、最近の睡眠薬は安全な薬ですので、もしすでに長期服用により慢性化している方であっても怖がることはありません。むしろ自分勝手に薬を止めようとして日中QOLを低下させてしまうことの方が問題です。
もし、休薬したい場合は医師とよく相談して、少量減量しながら様子を見るのが良いでしょう。