過度の飲酒習慣がなく、ウイルスにも感染しないで発症するNASH(非アルコール性脂肪肝炎)は、メタボリックシンドロームや肥満を主な原因とされ、中高年齢層だけでなく、若年層にも発症例が増えていることから注目されています。しかしながら現時点では決定的な治療薬がないというのが現状です。
そのような中、アスタキサンチンのNASHに対する効果を検証する臨床試験が実施され、注目を集めています。
この研究は、金沢大学脳肝インターフェースメディシン研究センターの太田嗣人准教授らのグループが行っているもので、臨床試験の前段階として動物実験により効果を検証しています。
同グループでは、NASHを引き起こす高コレステロールの餌を3ヶ月間マウスに与え、その後アスタキサンチンを混ぜて与えたグループと比較した結果、アスタキサンチンを混ぜたグループは、混ぜなかったグループに比べて肝組織中の中性脂肪の量が40~50%少なく、脂肪肝になりにくいことがわかりました。さらに、NASHを発症させたマウスに対してアスタキサンチンを混ぜた餌を与えると、肝硬変につながる組織の炎症や繊維化が改善していることも確認されています。
そこで太田准教授らのグループは、NASHやその一歩手前の40人の患者に対してアスタキサンチン含有(原料提供;富士化学工業)サプリメントを6ヶ月間服用させてヒトでNASHの予防・抑制効果があるかどうかを調べる臨床試験を実施し、現在はデータの解析を行っているところです。
太田准教授は「アスタキサンチンは脂肪蓄積を抑える可能性を示した。また、NASHの予防だけでなく、その症状の抑制効果も期待できる。NASHの発症には脂肪蓄積が原因の活性酸素過剰発生による酸化ストレスがあり、それを防ぐにはアスタキサンチンが有効ではないか。」とコメントしています。