滋賀医大と東京都健康長寿医療センターの共同研究チームは4日、「ILEI」と呼ばれるたんぱく質にアルツハイマー病の発症を抑制する効果があることを発見したと発表した。論文の責任著者で滋賀医大分子神経科学研究センターの西村正樹准教授は「副作用のない新たな治療薬の開発につながる可能性がある」としている。4日付の英科学誌ネイチャーコミュニケーションズに掲載された。
アルツハイマー病患者の脳は、たんぱく質「アミロイドベータ(Aβ)」が蓄積し、記憶障害などを引き起こすとされる。このため、Aβが作られる原因となる酵素の働きを阻害する治療法が研究されてきた。しかし、この治療法では皮膚がんの発症など重い副作用が出ることが課題だった。
チームは、Aβの生成に関係する複数のたんぱく質を調査。その中で、アルツハイマー病の人は健康な人に比べ、脳内のILEIが半減していることを見つけた。
また、アルツハイマー病になりやすいよう遺伝子操作したマウスの脳内でILEIの量を強制的に増やし、迷路を走らせて実験したところ、記憶障害をほとんど起こさず、正常なマウスと同じ約60%の正答率となることが判明した。副作用も起きなかったという。
西村准教授は「治療薬を開発する際、これまでは副作用が最大の壁だった。ILEIと同じ働きをする薬ができれば画期的だ」と話している。
(2014年6月4日 毎日新聞)