本年4月に目を疑うような記事が目にとまりました。
それは、高血圧症の判断基準が収縮期血圧147/拡張期血圧94以上になったというような誤解を招きかねない報道です。
週刊誌などでも「高血圧新基準値147以上」など、あたかも高血圧症の治療開始基準が緩和されたかのような表現で報道されていました。
しかし、これは日本人間ドック学会が発表した基準値で、人間ドックを受けた健康と思われる人のデータをもとに作成したもので、病気予防のための基準値ではありません。
日本高血圧学会が、2009年以来5年ぶりに本年4月に発表したガイドラインによれば、
降圧目標値として下記の通り発表しています。
●若年、中年、前期高齢者患者
診察室血圧:140/90mmHg未満
家庭血圧:135/85mmHg未満
●後期高齢者患者
診察室血圧:150/90mmHg未満(忍容性があれば140/90mmHg未満)
家庭血圧:145/85mmHg未満(忍容性があれば135/85mmHg未満)
●糖尿病患者
診察室血圧:130/80mmHg未満
家庭血圧:125/75mmHg未満
●CKD患者(蛋白尿陽性)
診察室血圧:130/80mmHg未満
家庭血圧:125/75mmHg未満
●脳血管障害患者・冠動脈疾患患者
診察室血圧:140/90mmHg未満
家庭血圧:135/85mmHg未満
注:目安で示す診察室血圧と家庭血圧の目標値の差は、診察室血圧140/90mmHg、家庭血圧135/85mmHgが、高血圧の診断基準であることから、この二者の差をあてはめたものである
初診時の高血圧症治療計画として、まずは諸検査により合併症等の有無を調べると同時に生活習慣の改善指導を行いますが、その際に、喫煙・年齢・脂質異常症の有無・肥満度などの危険因子を考慮して、低リスクの方・中等リスクの方・高リスクの方に分けて治療計画を立てていきます。
低リスクと判断された方には、下記の生活習慣の修正を3ヶ月間行います。中等リスクと判断された方は1ヶ月間の生活習慣の修正を行います。
●生活習慣の修正項目
1.減塩
6g/日未満
2a.野菜・果物
野菜・果物の積極的摂取
2b.脂質
コレステロールや飽和脂肪酸の摂取を控える。
魚(魚油)の積極的摂取
3.減量
BMI(体重(kg)÷[身長(m)] )が25未満
4.運動
心血管病のない高血圧患者が対象で、有酸素運動を中心に定期的に(毎日30分以上を目標に)運動を行う
5.節酒
エタノールで男性20~30ml/日以下、女性10~20ml/日以下
6.禁煙
(受動喫煙の防止も含む)
それでもなお、収縮期血圧140/拡張期血圧90以上の場合は、降圧剤による治療を実施することになります。
一方、高リスクと判断された場合は、生活習慣の修正を行うと同時にただちに降圧剤による治療を開始することになります。
高血圧症だけではなく、健康維持のために、上記のような生活習慣の修正を心がけることが大切と思われますので参考になさって下さい。