心臓を取り囲む血管「冠静脈」の形成に欠かせないたんぱく質を特定したと、大阪大の中岡良和助教(循環器内科学)らのグループが発表した。心臓の表面にこのたんぱく質が分泌され、冠静脈を作る目印になっていた。心筋梗塞(こうそく)などの新しい治療法につながる成果で、英オンライン科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に22日、論文が掲載された。
心臓の周囲には、新鮮な血液が流れる冠動脈と、酸素などを運び終えた血液が流れる冠静脈がある。心筋梗塞は冠動脈が詰まって心臓の筋肉が壊死(えし)する病気。カテーテルと呼ばれる管を使って血管を広げる治療法が中心だが、冠動脈と冠静脈を再生させて根治させる方法の開発が望まれている。
ただ、冠動脈の形成の仕組みは解明されているが、冠静脈の方はわかっていなかった。中岡助教らは、心筋などが分泌するたんぱく質「Ang1」に注目。マウスが胎児の時に「Ang1」を作れないようにすると、冠静脈ができなかった。
中岡助教は「人工的に心筋梗塞の状態にしたマウスの心臓にこのたんぱく質を注射し、治療効果を試したい」と話している。
(2014年7月22日 毎日新聞)