高齢化社会に伴って、増加し続ける医療費を何とか食い止めるため、厚生労働省はジェネリック医薬品の使用を推進しています。
ジェネリック医薬品(後発品)とは、研究開発された医薬品を新薬(先発品)として販売されてから一定の期間が経過し、特許が切れた段階で他の製薬メーカーが製造・販売する同じ成分のお薬のことです。
後発品は、研究開発費が新薬に比べてかなり抑えられますので、お薬の価格も安くなります。
国としては、医療費削減のひとつの方法として価格の安い後発品を推奨しています。
ただし、成分が全く同じであってもどの疾患に使用できるのかという「適応症」は、先発品と後発品で異なる場合があります。これが後発品推奨の落とし穴となります。
後発品推奨の取り組みのひとつとして、本年4月に法改正があり、処方箋の記載方法で一般名(成分名)で記載された医薬品は原則として後発品で調剤するようにすすめています。それに従い、もし先発品で調剤した場合は、その理由をつけて保険請求しなければならなくなりました。もちろん患者さんが先発品を希望される場合は、その理由を記載して先発品で調剤することも可能です。
最近では、健康保険組合などは、先発品を使用している患者さんに対して個々に「先発品を後発品に変えるとこれだけ負担金が安くなります」というような案内文書を郵送する場合もあります。
また、生活保護を受給されている方に対しても福祉事務所から後発品を推奨する文書を郵送することもあります。
このようにこぞって後発品を推奨していますが、それによるトラブルも見受けられるようになってきました。
例えば、低用量アスピリン製剤の服用時における胃潰瘍の防止を目的にしたお薬の「ランソプラゾールカプセル15mg」の場合、「低用量アスピリン製剤の服用時における胃潰瘍の防止」として使用が認められているのは先発品のタケプロン15mgだけで、後発品にはその使用に対する適応症がありませんので、バイアスピリンとともに一般名でランソプラゾールカプセル15mgと記載されている場合は、適応症を考慮して薬局では自動的にタケプロン15mgで調剤することになります。
ところが、この場合は処方箋には一般名で記載されていますので、健康保険組合から患者さんのところに「後発品に変えた場合はこれだけ負担金が安くなります」という文書が郵送されてくる場合があり、それを見た患者さんは「なぜ安くできる薬があるのにそれを使わないのか」というクレームを薬局に申し出る場合があります。
そのときに薬局として、国が認めている「適応症」の違いをお話するのですが、なかなか納得されないケースもあるようです。
国として、積極的に後発品を推奨するのであれば、このようなトラブルを避けるためにも後発品の販売を認める段階で先発品と同じ適応症を許可していくことを前提とすることも必要ではないかと思われます。