そもそも「お薬手帳」の重要性が認識されはじめたのは、東日本大震災のときでした。
あの大震災のときに、病院やクリニックのカルテなどがなくなってしまい、日ごろからお薬を服用している方が、自分がどんな薬を服用しているのかわからない場合が多く、医師も自分の患者以外では、その方が今までどんな薬を服用していたのかわからないということがあり、結果として病状が安定しないことにつながりました。
一方で、手もとに「お薬手帳」を持っていた人は、今までどんな薬を服用していたのか具体的に知ることができて、主治医以外の医師に受診したときにも治療がスムーズにできたという経験から「お薬手帳」の重要性が認識されはじめました。
その後、国を挙げて「お薬手帳」の普及に力を入れていますので、今では「お薬手帳」を持参することが当たり前のようになってきました。
さて、その「お薬手帳」ですが、以下のような場面でも力を発揮しています。
偏頭痛で通院していた患者さんが、いろいろな薬を試していましたが症状が改善されなかったため、通常の保険適応では高血圧症に使用するインデラルという薬が、偏頭痛にも効果があることがわかっているので試すことになりました。
薬局にお薬手帳と処方箋を一緒に提出して、お薬をもらうときに、お薬手帳を確認した薬剤師から、「以前に処方された偏頭痛のお薬の飲み残しはありませんか」とたずねられました。
患者さんは、家に残っている薬のことを思い出して「マクサルト錠」が残っていることを伝えたところ、「本日、処方されたインデラルというお薬は、マクサルト錠の作用を増強する可能性があり併用してはいけないことになっていますので、マクサルト錠は服用しないで下さい」といわれました。
皆さんも薬局でお薬をもらうときに「今まで処方されたお薬は、きちんと服用できていますか?」や「残っているお薬はありませんか?」など聞かれた経験があるのではないでしょうか。
それは、上記のように自宅に残っているお薬と新たに処方されたお薬の飲み合わせが悪い場合、お薬の副作用を事前に防止するという目的もあるからです。
あるいは、同じお薬がたくさん残っている場合は、そのお薬を処方から削除していただく事により、患者さんや国の薬代金の負担が軽減されることにもつながります。
また、「お薬手帳」をご持参いただいているのは、上記のように以前に処方された薬と新たに処方された薬の飲み合わせを確認したり、特に複数の医療機関に受診している場合、お薬手帳にはすべての
医療機関の情報が記載されていますので、同じような効果のあるお薬を重複して服用することを防いだりできるというメリットもあるからです。
皆様も「お薬手帳」を持参する意味を正しく理解して、医療機関や薬局に行かれるときには必ず持参するように致しましょう!