認知症の予防に効果のある食品中に含まれる成分として、卵黄レシチン、大豆レシチン、DHA、ヤマブシタケ、イチョウ葉エキス、フェルラ酸などがよく知られています。
最近では、これらの成分以外にもポリフェノールが認知症予防に効果がある成分として注目されています。
ポリフェノールとは、植物が光合成を行うときに作り出す色素や苦味の成分で、野菜や果物に多く含まれています。
東京都医学総合研究所(世田谷区)認知症・高次脳機能研究分野長の長谷川成人(まさと)氏は、
「アルツハイマー型認知症は、加齢により脳の中に不要なたんぱく(アミロイドβとタウ)が蓄積することが原因で起きると言われています。
これらはがん細胞のように広がっていく性質があり、特にタウの蓄積が認知症の症状につながることがわかっています。この蓄積や広がりを抑えられれば、認知機能の低下や症状を防ぐことができ、その働きをポリフェノールが補っていると考えられるのです」
と説明しています。
長谷川氏らは、人工的に作ったアミロイドβやタウたんぱくの他に、レビー小体型認知症(アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症に続く、患者数の多い認知症)の原因になるαシヌクレインにポリフェノールを混ぜて、蓄積や広がりの変化をみる実験を行った結果、この三つのたんぱくすべての蓄積を抑えることが明らかになったのは、緑茶のエピガロカテキン・ガレート、赤ワインや果物のミリセチン、紅茶のテアフラビン、ナスのデルフィニジンなどであることを発見しました。
これは試験管のなかの実験による結果ですが、実際に人を対象にした疫学研究の結果ともおおむね一致しています。例えば、金沢大の研究では、石川県七尾市に住む60歳以上の男女490人について、約5年にわたって認知症の発症率を調査したところ、緑茶を毎日飲む習慣がある人は、飲まない人に比べ、認知症の発症や認知機能の低下リスクが3分の1だったという報告などがあります。
ポリフェノールには抗酸化作用があり、細胞を活性酸素から守るという働きもあり、認知症と深いかかわりのある生活習慣病の予防にも有効と考えられます。
現在、認知症対策サプリメントを使用されている方も、例えばエピガロカテキン・ガレートを多く含む抗酸化サプリメント(アスタファイブなど)との併用も理想的な組み合わせかも知れません。
日ごろの健康維持のためにも、意識してしっかりポリフェノールを摂取することをおすすめします。