肺がん死者数の半数を占め、非喫煙者にも発生するとされる「肺腺がん」を引き起こす異常な遺伝子を国内外の3チームがそれぞれ別の方法で発見し、12日付の米医学誌「ネイチャー・メディシン」に同時発表した。甲状腺がんの治療薬の一つに、この遺伝子によるがん化を抑える効果があることも判明、治療法の開発につながる成果として期待される。
この遺伝子は、本来は離れた場所にある二つの遺伝子が何らかの理由でちぎれてくっついた「KIF5B-RET融合遺伝子」。国立がん研究センター(東京都中央区)、がん研究会(同江東区)、米医療ベンチャーの3グループが発見した。
国立がん研究センターの河野隆志ゲノム生物学研究分野長らは、日本人30人の肺腺がん患者のがん細胞内のすべてのリボ核酸(RNA)を解読し、1人の患者から融合遺伝子を発見。さらに日米の計約400人の患者を調べたところ、日本人で6人(1・9%)、米国人で1人(1・3%)のがん細胞から融合遺伝子が見つかった。この割合を国内であてはめると、肺がんによる年間死者数約7万人のうち、約700人が融合遺伝子が原因の肺腺がんの可能性があるという。
また、融合遺伝子は二つの別々の遺伝子がくっつくことで細胞増殖をうながす酵素が発生し続け、細胞のがん化につながることが分かった。この酵素の働きを抑える甲状腺がんの治療薬「バンデタニブ」を投与すると、がん細胞を減少させる効果があった。「バンデタニブ」は国内未承認だが、がん研究センターによると、同様の効果のある複数の薬が国内で臨床試験中だという。
2012.2.14 毎日新聞
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