岡山大学は、重い不整脈の治療機器「ペースメーカー」の働きをする細胞を、マウスから作ることに成功した。現行の機械式より体に優しい、細胞タイプのペースメーカーの開発につながる可能性があるという。今後、人間の細胞で研究を進め、実用化を目指す。
24日から大阪市で開かれる日本循環器学会で発表する。
健康な心臓では、「洞結節」という幅約5ミリ、長さ20~30ミリ程度の小さな組織から出る電気信号が心臓全体に伝わり、正確な脈拍を保つ。ペースメーカーは、この洞結節や伝導路の働きが弱った人に使う。直径4~5センチ、厚さ5~6ミリの本体を通常、胸の皮膚の下に手術で固定し、導線を通じて心筋に電気刺激を送る。
国内では推計で30万~40万人が装着していて、新たに装着する人は年間約6万人いる。電池の消耗で5~10年ごとに本体を交換する手術が必要。また、異物を入れるため、感染を起こす危険性もある。
岡山大学大学院の中村一文准教授(循環器内科学)らは、マウスの受精卵から作った万能細胞の一種「ES細胞」に特定の遺伝子を導入することで、洞結節によく似た機能を持つ心筋を作り出した。不整脈状態にしたラットの心臓に注入すると不整脈が半減した。
中村さんは「細胞タイプのペースメーカーを作る手がかりがつかめたのではないか」と話している。
(2015年4月24日 朝日新聞)