筋ジストロフィーのマウスの筋力を回復する可能性がある物質を慶応大と国立精神・神経医療研究センターの研究チームが見つけた。筋肉のもとを作る幹細胞も増やす効果があるという。英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ電子版に発表した。
筋肉が壊れていく難病の筋ジストロフィーは生まれつきの病気で、2~5歳ごろから発症する。幹細胞が早期に消耗すると考えられ、現時点では有効な治療法はない。研究チームは、がん治療で白血球が少なくなった患者の治療などに使うG―CSFと呼ばれるたんぱく質に注目。重症型の筋ジストロフィーのマウスに週2回程度注射して効果を調べた。
すると、長期間にわたり筋力の回復効果があり、平均生存期間は、発症前から注射したマウスは注射しなかったマウスの2倍程度になった。発症後に注射を始めたマウスでも延命効果があった。G―CSFが、筋肉の再生を促すだけでなく、幹細胞も増やすことも実験で確かめた。慶応大の湯浅慎介専任講師は「G―CSFは安全性が確認されている薬だけに効果を期待したい」と話している。
(2015年4月23日 朝日新聞)