この度は、世界中で何千万人が使用していると言われているコレステロール低下薬「HMG-CoA還元酵素阻害薬」、いわゆる「スタチン系医薬品」についてお話します。
最近、「コレステロールは高いほうが長生きする」や「コレステロールは下げるほど良い」といった、相反する主張をよく耳にしますが、結論から申しますとどちらにも言い分があります。従って、血清コレステロール値は低すぎても高すぎてもよくないと理解して頂ければと思います。即ち、血清コレステロール値が明らかに高い方は、お薬による治療は必要になります。そのひとつの理由は、高コレステロール血症は動脈硬化性疾患の重要な危険因子となるからです。日本人も食生活の欧米化など生活習慣の変化に伴って、血清コレステロール値が高くなっている方が増えてきていますので注意をしなければなりません。
コレステロール低下薬は、いろんな種類がありますが、いわゆる「スタチン系医薬品」が発売されてから劇的に効果が期待できるようになりましたので、現在では最もよく使用されているコレステロール低下薬と言っても過言ではありません。
ところが、その「スタチン系医薬品」に、脂溶性スタチンと水溶性スタチンがあり、その違いを理解した上で使用されている医師は少ないようです。即ち、スタチン系医薬品であればどれも同じ、メーカーが違うだけ・・・のような感覚です。しかし、実際にはそうではありません。
「スタチン系医薬品」の作用機序は、肝臓細胞内でコレステロールの合成を抑制することです。従って、肝臓細胞内で作用すればそれで良いわけです。水溶性スタチンは、主に肝臓細胞内に入り込んで作用を発揮します。脂溶性スタチンは、肝臓細胞にも入り込みますが、それ以外の臓器(例えば心臓やなど)にも入り込むという違いがあります。
おそらくこの差によるものと思われますが、血清コレステロール値を低下させるという目的だけでしたら、水溶性スタチンを使っても脂溶性スタチンを使っても大差はないのですが、患者さんが狭心症などを発症した場合においては、心筋収縮力の回復に差があることが実験でわかっています。これは動物実験の結果であり、ヒトでの検証結果ではありませんので、断言は出来ません。私たちが学生のころには、「薬の作用は解っているような顔をしながら、実は解っていないことのほうが多い」という話を聞かされたものです。当時はにわかに信じがたいことでしたが、「最近になってわかってきたことですが・・・」ということもたくさんあり、その意味も薬剤師になってからやっと理解できるようになりました。
スタチン系医薬品の今後のさらなる研究結果を待ちたいと思います。
どのようなお薬にも言えることですが、上述のとおり今私たちが知っていることは、当然現在わかっている範囲での情報だけです。もしかするともっとすごい別の作用があるかも知れませんし、予期しない副作用を発症するかも知れません。実際に、ごく稀にですが医薬品の発売後に副作用を発症して販売中止になることも見受けられます。
余談にはなりますが、そういうことを考えると長い歴史の上に積み重ねられた「漢方薬」や食経験の長い原料を
利用した「健康食品」の方が安全性という面で安心できるといえるかも知れません。
即ち、一概に「薬だから安全・安心」と結びつけるのもよくないこともあると思われます。
健康食品を選ぶポイントとして何が重要かといえば、使用原料の規格や安全性試験結果はもちろんですが、製造工場のレベルも重要です。製造工場が、いわゆるGMP認定工場(少なくともそれに準じた規定がある工場)であるかどうかがひとつの判断基準になりますのでご参考になさってください。
その理由については、機会があればお話したいと思います。