国立がん研究センターの柴田龍弘分野長らのチームは、変異があると胆道がんを引き起こす遺伝子32個を特定したと、米科学誌ネイチャージェネティクス電子版に発表した。胆道がんは治療が難しいとされるが、4割の患者には新たな薬の候補物質があることも分かった。
チームは、日本人患者260人から手術で取り出したがん組織などのゲノム(全遺伝情報)や遺伝子に関連するリボ核酸(RNA)を分析し32個の遺伝子を特定した。うち14個の変異については、別の病気で治療薬の開発が進められており、全国規模の臨床試験を行いたいとしている。14個のうち1個以上の変異を持つ患者は全体の4割を占めるという。
チームはさらに、特に治療の難しかった人の組織では、がん細胞が自分を攻撃しようとする免疫細胞をおとなしくしてしまう分子を多く持っていることを発見した。この分子の働きを邪魔する抗がん剤は現在、皮膚のがんを対象に実用化されており、胆道がんにも使える可能性があるという。
胆道がんは、肝臓で作られた胆汁を十二指腸まで流す胆管や、胆汁を一時的にためる胆のうにできる。年間2万人以上が診断されるが、5年後の生存率は2割と低い。
(2015年8月13日 毎日新聞)