人の免疫の仕組みは、誰かが考えてできたものではありませんが実にうまく出来ています。
いや、うまく出来すぎています。その仕組みの適応能力のすばらしさによって人類は滅びることなく生き延びてきたのでしょう。
「何がすごい」のか、もちろん一言では言い現せませんが、免疫の仕組みは、最近になってやっとわかってきたことも多く、まだまだ解明されていないことがたくさんあります。
科学が進歩しているとは言え、実はまだまだわからないことのほうが多いのです。
我々が「わかっている」と思っていることは、あくまでも「現時点で」わかっているということだけで、「すべて解明されたので研究がこれで終わり」ということはありえません。
さて、前置きが長くなりましたが、最近になって「肥満」と「免疫」についてもわかってきたことがあります。
肥満が感染症の危険因子でもあり、肥満が原因で肺炎などの重篤な症状を引き起こすこともあることがわかってきました。
日本女子大学の佐藤学長らのグループによれば、「肥満によって免疫機能を調節するサイトカインという生理活性物質のバランスが崩れて免疫機能に変調をきたした」と分析しています。
最近の論文では、肥満が様々な感染症発症のリスク要因になる他、炎症を悪化させたり、がんの原因になったりしていることが発表されています。
また、平成21年に大流行した新型インフルエンザでの死亡者や重症者に占める肥満の人の割合が高かったとする論文も発表されています。
さらに別の論文では、内臓脂肪蓄積型の肥満の人の大腸がん術後の予後が悪いことや人工関節置換術を行った方の術後の炎症が起こりやすくなることなども発表されています。
佐藤学長らは、「正常な免疫機能を維持するためには食事療法と運動療法とによる肥満の予防と改善が一番」と話しています。
おそらく脂肪細胞から免疫異常に対する何らかのシグナルが送られていると思われますが、詳細が解明されるまでまだ時間がかかりそうです。
「腹八分目(七分目)」が健康に良く、食べすぎは健康によくないと言われますが、ある程度の空腹感があったほうが長寿遺伝子を活性化して長生きできる可能性もあるといわれています。飽食の時代になっていますが、食生活の欧米化による肥満に気を配り、和食中心の食生活を心がけ、食べ過ぎに注意するなどの工夫も健康を維持する上で必要なことかも知れません。