特定の遺伝子を持つタイプの虫歯菌が、脳出血の発症に関与している可能性が高いと、国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)の猪原匡史・脳神経内科医長らのチームが5日、英電子版科学誌サイエンティフィック・リポーツに発表した。
厚生労働省の調査によると、成人の9割以上は虫歯があり、ほとんどが虫歯菌を持っているとされる。菌は様々な遺伝子タイプがあるが、猪原医長によると、血小板の止血作用を低下させる「cnm遺伝子」を持つタイプは約1割を占めるという。
チームは脳卒中(脳出血や脳梗塞など)で同センターに入院した79人の唾液を採取し、cnm遺伝子を持つ虫歯菌の有無を調べた。
脳の血管が破れる脳出血の23人のうち、6人(26%)からこの遺伝子タイプの菌を検出。一方、血の塊が脳の血管に詰まる脳梗塞などの56人からは4人(7%)しか検出されなかった。
菌が、血管の壁にくっついて炎症を起こし、壁がもろくなって破れやすくなる。出血も止まりにくくなると考えられるという。
猪原医長は「歯磨きなどの口腔ケアや、歯科治療で虫歯菌を減らすことで、脳出血の予防につながる可能性がある」と話す。
(2016年2月6日 読売新聞)