大腸がん組織に腸内細菌が入り込むと、がんに対する免疫機能が高まるとみられることを、坂口志文(しもん)・大阪大免疫学フロンティア研究センター教授らのチームが明らかにした。腸内細菌の活動を促進することでがんを抑える新しい治療法につながる可能性もあるといい、国際的学術誌ネイチャーメディシンの電子版に26日掲載された。
坂口教授らは、大腸がんの患者から採取した組織を詳しく解析。がん組織に特定の腸内細菌が入り込むと「制御性T細胞」と呼ばれる細胞の働きが弱まり、がん細胞を排除する免疫の機能が高まるとみられることが分かった。
制御性T細胞は、免疫の機能を抑制するとされる細胞で、坂口教授らが発見した。通常、免疫が自分自身を攻撃しないよう調節する役割を持つが、がん細胞を排除する機能も低下させてしまうとされる。
坂口教授は「近年、がん細胞を排除する免疫の仕組みを利用した治療法が注目されているがメカニズムは良く分かっていない」と指摘。今回の研究は、腸内細菌を利用したがんの治療法や予防法につながる可能性があるという。
(2016年4月26日 産経新聞)