京都大大学院医学研究科の池田華子准教授(眼科学)と生命科学研究科の垣塚彰教授(創薬学)らの研究グループは、独自に合成した低分子化合物に緑内障の進行を抑制する効果があることを、マウスを使った実験で確認したと発表した。国内で失明の最大の原因となっている緑内障の、新たな治療薬の開発につながる可能性があるという。19日、英科学誌「ヒリヨン」(電子版)に掲載された。
緑内障は、眼球でとらえた像を脳に伝える視神経に障害が起き、視野が狭くなるなどの症状が出る病気。患者数は国内で300万~400万人と推定され、これまでは目薬や手術で眼圧を下げ、進行を止める方法しかなかった。ただ、眼圧を十分に下げるのが難しかったり、十分に下げても症状が進んだりする例がある。
グループは、目の病気「網膜色素変性」の治療のために池田准教授らが開発した低分子化合物「KUS剤」に注目。KUS剤が網膜の細胞の変性・死滅を防ぐなどして緑内障の進行を抑制することを、3種の異なるモデルマウスで確認したという。
今後は人体に対する安全性、効果などを検討した上で、患者への投与を目指す。池田准教授は「『神経保護』という新たな観点からの治療薬の開発につながる発見。他の病気への応用も期待できる」と話している。
(2016年4月20日 毎日新聞)