体内で生成されるたんぱく質「プロテインS」に、糖尿病の進行を抑制する働きがあることを突き止めたと、三重大大学院医学系研究科の研究チームが発表した。
三大合併症の一つ「糖尿病腎症」にも効果がある可能性があり、同チームは新たな治療法開発につなげたいとしている。
糖尿病は、インスリンを分泌する 膵臓 の β 細胞が破壊されたり、インスリンの分泌や効きが悪くなったりすることで、血液中の糖が吸収されず慢性的な高血糖状態となる病気。合併症を招いて腎不全や失明、脳梗塞を引き起こす恐れがあり、 罹患 者は日本人の5人に1人に上るとも言われている。
プロテインSには血液の凝固を抑制する機能などが確認されていたが、糖尿病との関係はこれまで判明していなかった。研究チームは糖尿病状態にしたマウスにプロテインSを投与するなど実験を重ねた結果、β細胞の破壊を抑える働きが確認され、血糖値も上昇しなかった。
研究論文は今月、米国の糖尿病学会誌ホームページに掲載された。同チームの矢野裕准教授は「糖尿病だけでなく合併症に対しても、進行を抑制する効果が見られ、新しい治療法開発に結びつく可能性がある。実用化には課題も残されているが、研究を続けていきたい」としている。
(2016年5月19日 読売新聞)