2015年5月号の「くすりの話」では、高齢者に多い多剤処方についてお伝えしました。
今回の「くすりの話」も少し角度を変えてその続編をお話します。
今回は、誰もが高齢になると気になる「認知機能低下と薬の関係」についてです。
認知症といえば、65歳以上の5人に一人が羅患すると言われるほど身近な病気でもあります。実は、この認知症にも「薬剤性の認知機能低下」ということがよく知られるようになってきました。
例えば、老年医学会のガイドラインによれば、比較的使用頻度の高いアレルギー症状を抑える「抗ヒスタミン剤」や胃酸分泌を抑える「H2ブロッカー」、ベンゾジアゼピン系と呼ばれる睡眠薬などは認知機能低下リスクが高い薬として指摘しています。
また、日本神経学会においては、それ以外にも「降圧剤」や「利尿剤」、「非ステロイド系抗炎症薬」なども認知機能低下を誘発しやすい薬として公表しています。
いずれの薬も誰もが服用する可能性のある薬ですので、特に高齢者の方は、漠然と服用を継続するのではなく、目安として3ヶ月に一度は、本当に必要な薬かどうか主治医に確認しながら見直していくことも重要かも知れません。
最近の例では、便を柔らかくする比較的安全な薬として認識されていた「酸化マグネシウム」について、高マグネシウム血症により見当識障害(自分がどこにいるのか、今日は何月何日なのかなどが分からなくなる症状)を発症し、救急搬送されたケースが報告されています。
酸化マグネシウムの長期服用による見当識障害は、高齢になるにつれて腎臓機能が低下し、血中の電解質異常が発生しやすいためと考えられています。
その他にも痛み止めの薬でも薬剤性の認知機能低下を誘発することも報告されています。
以上の例でも分かるとおり、どんなに安全と言われている薬でも、漠然と服用を続けるのは良くないと思われます。
特に、高齢者はしっかり医師や薬剤師とコミュニケーションをとりながら、本当に必要なお薬だけを服用するように心がけましょう!
薬の種類によっては自分勝手に薬の服用を中止すると命にかかわることもございますので、くれぐれも自分勝手に薬の服用を中止することはしないでください。