高コレステロール血症、特に高LDLコレステロール血症は、代表的な脂質異常症であり、「心筋梗塞」などの危険因子となるため、一定の値まで数値を下げるべきという説が定着している一方で、「コレステロール値が高いほど死亡率が低い」という研究報告もあり、一般の方には何がなんだか訳が分からない、相反することが発表されています。
「一体、どういうこと?」
まず、「高コレステロールによって血管が詰まりやすくなる」ということは紛れもない事実です。でも、突然死の原因の全てが高コレステロールにあるのではなく、高血圧や喫煙等の複数の危険因子が絡み合うことによって「心筋梗塞」や「脳梗塞」などの重大な病気が起こりやすくなります。
また、「高コレステロール=早死に」と言い切れないのは、コレステロールと関連すると考えられる疾患は、そもそも若い年齢では発症率が低く、実は研究データ自体が十分に揃っていないという背景もあります。
なんだか屁理屈みたいで、分かったような分からないようなスッキリとしないでもありませんが、いつもお伝えしている通り、コレステロールについても「過ぎたるは猶及ばざるが如し」と言えると思いますので、日常生活の中で、運動や食事に十分注意しながら、必要に応じてお薬を使用し、コレステロール値を基準値内に保つことが健康維持には良いと思います。
さて、前置きが長くなりましたが、現在の治療薬の中では、高コレステロール血症の方には「スタチン系」と言われる医薬品が非常に効果を発揮しており、殆どの方はこの薬でコントロールできるようになりました。
最近では、水溶性のスタチン系は、脂溶性のスタチン系に比べて心臓病発症後の回復が早いという研究結果が報告されるなど、スタチン系の研究も進んでいます。
ところで、国内で500人に一人といわれている家族性高コレステロール血症の患者さんは、残念ながらスタチン系のお薬でも効果が得られない場合が多いのが現状です。
そのような中、家族性高コレステロール血症の方でも悪玉コレステロールといわれているLDLコレステロール値の低下が期待できるヒトモノクローナル抗体薬剤が本年7月と9月に相次いで発売されました。
これは内服薬ではなく、皮下注射薬となっていますが、家族性高コレステロール血症の方にとっては朗報だと言えます。
現在、世界30カ国/地域以上で承認されているお薬ですので、この系統のお薬は今後ますます注目されるようになると思われます。