若い人が発症する歯周病は、遺伝子の異常が原因になっている可能性があることを、東京医科歯科大の和泉雄一教授(歯周病学)の研究グループが6日付の国際歯学誌に発表した。免疫に関する遺伝子の異常が一部の患者に共通することを発見した。
歯周病は高齢者に多いとみられているが、最近は若者の患者も増えており、侵襲性(しんしゅうせい)歯周炎と呼ばれる。歯を支える骨が急速に溶けるなどの症状がある。10~30歳代で発症することが多く、国内で数万人の患者がいるとみられる。生活習慣病などが原因となる高齢者の慢性歯周炎とは異なり、原因が不明で治療も難しかった。
グループは、侵襲性歯周炎の患者99人のゲノム(遺伝情報)を解析。うち10人に、細菌感染時に免疫を発動する遺伝子に異常が見つかった。10人のうち、3人と2人はそれぞれ同じ家系で、遺伝する可能性があることも分かった。
歯周炎は細菌感染による過剰な免疫で起こることが知られており、この遺伝子の異常が免疫をより過剰にし、急速に症状を進行させている可能性があるという。和泉教授は「遺伝子検査などで、早期の発見や予防につながる可能性がある」と話している。
(2017年7月6日 毎日新聞)
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若い人の歯周病 遺伝子異常が原因か 東京医科歯科大
失明を招く血管異常、東北大チームが再現…新薬開発へ応用期待
ヒトの網膜の細胞と血管の細胞を培養し、栄養が足りない状況にすることで、失明の恐れがある 滲出 型加齢黄斑変性につながる状態を再現できたとする研究結果を東北大学の研究チームがまとめた。
新薬開発への応用が期待される。
滲出型加齢黄斑変性は、視力をつかさどる「黄斑部」に異常な血管が伸びて傷つけられる病気で、国内の推定患者数は約70万人。
同大学准教授の梶弘和さん(バイオデバイス工学)らのグループは、細かい穴の開いたシリコーンゴム製のチップで、ヒトの網膜の細胞と血管の細胞を培養。細胞が成長したところで、栄養となる血糖や酸素が足りない状態にした。すると、チップを境にして網膜の細胞と分かれていた血管の細胞が反対側に入り込み、網膜の細胞を破壊する様子が確認できた。
(2017年6月22日 読売新聞)
血管性認知症 特定のたんぱく質、通常の5~10倍分泌
脳梗塞(こうそく)などで発症する「血管性認知症」の患者の脳内では、特定のたんぱく質が通常の5~10倍分泌されていることを京都大大学院医学研究科のチームが突き止めた。マウスによる実験で、このたんぱく質の作用を抑える薬を投与すると脳組織の障害を改善できることも確認。血管性認知症の治療薬開発につながる成果という。1日、英学術誌「ブレーン パソロジー」(電子版)に掲載された。
血管性認知症は、血管が詰まるなどの異常が発生した影響で脳組織に障害が起き、発症する。認知症の原因疾患ではアルツハイマー型に次いで多く、特に65歳未満では全体の40%以上を占める。
チームは今回、細い血管で発症し、全国で約50万人の患者がいると推計される「小血管性認知症」を対象に研究。亡くなった76~90歳の男女患者計7人の脳内を調べたところ、血管を作る「骨形成たんぱく質(BMP)4」が、健康な人に比べて増えていることを発見した。
血液循環を維持するためとみられるが、多すぎて逆に脳組織を傷つけ、認知機能の低下を引き起こしていた可能性があるという。脳への血液供給を少なくしたマウスにBMP4の働きを抑制する薬を投与すると、脳組織の障害が改善した。
チームの上村麻衣子特定研究員は「BMP4を抑制する薬の中には人体への安全性が確認されているものもある。今後、小血管性認知症の治療に使えるか研究したい」と話している。
(2017年6月1日 毎日新聞)
うつ病に胃薬が効果か マウス実験で症状改善
岡山理科大(岡山市北区)などの研究グループは、胃薬を飲めばうつ病のような症状が改善することをマウスの実験で突き止めたと発表した。今後、うつ病患者を対象にした治験を実施して、人にどの程度の効果があるか確認する。研究成果は1日、米科学振興協会の電子版科学誌に掲載された。
中心となって研究を進めた同大理学部の橋川直也講師(分子生物学)によると、胃薬は「テプレノン」。細胞がストレスにさらされて傷付いた際に生成され、細胞を保護する役割を持つ「熱ショックたんぱく質(HSP)」の発現を促進させる効果を持っている。HSPがうつ病の発症や症状に関わっていることも今回の研究で判明した。
研究グループは、縄張り意識が強い大きなマウスがいるケージに小さいマウスを入れ、攻撃されるなどしてストレスがかかってうつ病のような状態になった小さいマウスの脳内を解析した。その結果、記憶や学習能力をつかさどる「海馬」のHSP発現量が通常のマウスと比べて大幅に低下したことが分かった。
そこで、テプレノンを経口投与したところ、他のマウスを怖がらなくなり、うつ病のような症状が改善した。HSPが増加すると、神経の成長や再生を促す物質で、抗うつ効果がある「神経栄養因子(BDNF)」の発現量が増えることが確認され、症状改善に至るメカニズムも解明した。
また、人への効果を確認するため、米食品医薬品局(FDA)が公開するデータベースを分析。肝炎などの治療薬「インターフェロン」は副作用でうつ病になることが知られているが、併せてテプレノンを服用していた場合は、うつ病を発症する確率が4割ほど低くなっていたことも明らかにした。
研究グループによると、既存の抗うつ薬は重い副作用を伴うものもあり、新たなメカニズムによる治療薬の開発が求められているという。橋川講師は「テプレノンは安全性が確立している。治験で効果を確認し、2、3年以内での実用化を目指したい」と話している。
(2017年6月1日 毎日新聞)
高齢の糖尿患者は「十分なたんぱく質を」 学会が新指針
日本老年医学会と日本糖尿病学会は65歳以上の糖尿病患者に限定した診療指針を初めて作成した。通常、糖尿病の治療ではたんぱく質の摂取量が制限されるが、高齢者の場合、筋肉量が落ち、歩行や立ち上がる能力の低下につながる恐れがある。このため「重度の腎機能障害がなければ、十分なたんぱく質をとることが望ましい」とした。18日から名古屋市である日本糖尿病学会でシンポジウムを開くなどして内容を周知する。
高齢の糖尿病患者は重い低血糖になりやすく、うつやQOL(生活の質)の低下、転倒につながる場合がある。そのため指針は、昨年5月に両学会が公表した、若い患者の目標値よりもやや緩くした血糖管理の基準値を記載。日常生活活動度(ADL)や認知機能、薬の使用状況などに応じて7グループに分類し、直近1~2カ月間の血糖の状態を示す「ヘモグロビン(Hb)A1c」の上限について、従来の6~8%未満を7~8・5%未満に変更した。
また、認知機能や身体機能の評価、血糖管理の目標値など15項目についても解説。終末期ケアについては、患者が「尊厳のある人生を全うできるように援助する」と記載し、薬の減量や中止も選択肢とした。
日本老年医学会の代表として指針の作成に関わった井藤英喜・東京都健康長寿医療センター理事長は「この指針を診療に生かしてもらうと同時に、指針で明らかにした解決すべき課題について研究が進んでほしい」と話している。
(2017年5月17日 朝日新聞)
睡眠障害「ナルコレプシー」覚醒物質で症状抑制
昼間に急激な眠気に襲われる深刻な睡眠障害「ナルコレプシー」の症状が、脳内の覚醒物質「オレキシン」に近い働きをする物質で抑えられることをマウスの実験で確かめたと、筑波大の研究チームが発表した。ナルコレプシーの治療は対症療法しかないが、根本的な治療薬の開発が期待されるという。16日の米科学アカデミー紀要に掲載された。
ナルコレプシーは日中、突然眠気に襲われたり、感情が高まると筋肉が脱力したりするなどの症状がある。1000人に1人が発症するといわれ、社会生活への影響が大きい。
脳内の覚醒物質オレキシンの不足が原因とされるが、オレキシンは静脈注射などによって投与しても脳まで届かず、効果がない課題があった。
研究チームは、脳に到達し、オレキシンと同様の働きをする化合物を開発。ナルコレプシーの症状があるマウスに投与したところ、脱力する発作が抑えられ、連続投与しても効果が持続したという。
一方、この化合物は経口投与では症状の抑制効果が弱いなどの課題もあるという。チームの柳沢正史教授は「経口投与で、強い効果がある物質を見つけたい」と話している。
(2017年5月16日 毎日新聞)
皮膚がん抑制物質発見
皮膚がんの一種の悪性黒色腫(メラノーマ)細胞の増殖を抑える新たな化合物を発見したと、近畿大の杉浦麗子教授(ゲノム創薬)のチームが9日、発表した。
がん化した細胞を標的に作用するため、正常な細胞への影響が少なく、副作用の少ない新規の抗がん剤開発につながる可能性があるとしている。
チームは特定のメラノーマ細胞で、がん細胞の増殖に関わる酵素「MAPキナーゼ」の一種が異常に活性化している点に注目。
独自開発した化合物の探索システムを使い、MAPキナーゼの働きを調整できるものを調べた結果、「ACA-28」という化合物が見つかった。
人のメラノーマ細胞を用いた培養実験で、ACA-28にはメラノーマ細胞の増殖を抑制したり、アポトーシスと呼ばれる細胞死を引き起こしたりする働きがあることが分かった。
メラノーマは早期に転移し、悪性度や致死率が高いがんの一つ。杉浦教授は、ACA-28の臨床応用に向け、抗がん作用が起きる詳細な仕組みの解明や、人の体内で安定して効果を出せるかなどの課題を挙げ、「治療の選択肢の一つになるように研究を進める」と話した。
(2017年5月9日 産経新聞)
細胞のがん化に関係か、染色体構造を解明…治療研究に役立つ可能性
生命の設計図であるDNAが折り畳まれた「染色体」のうち、遺伝子読み取りの際に変化する重要な部分の構造を解明したと、 胡桃坂 仁志・早稲田大教授らが発表した。
がん治療の研究に役立つ可能性があり、論文が米科学誌サイエンスに掲載された。
染色体は、DNAがたんぱく質に巻き付いた「ヌクレオソーム」が無数に連なってできている。DNAの遺伝情報が読み取られる場所では、ヌクレオソームが移動して隣のヌクレオソームと合体すると考えられていたが、この部分の詳しい構造などは分かっていなかった。研究チームは、合体したヌクレオソームを試験管内で人工的に作り、詳細な立体構造を解明することに成功。この構造が、実際に細胞内で読み取り場所の近くにできることも確認した。
胡桃坂教授は「この構造の形成不全が、細胞のがん化に関係しているとみられ、がんの創薬研究に役立つ」と話している。
木村宏・東京工業大教授(細胞生物学)の話「DNAが働くための基礎的な仕組みの一端を解明した成果だ」
(2017年4月17日 読売新聞)
慢性心不全患者、がん発症率1.7倍に高まる
慢性心不全の患者は、がんを発症するリスクが1・7倍に高まるという研究結果を、国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)のチームがまとめた。チームは「心不全で発がんを促すホルモンなどが分泌される可能性がある」としている。論文が7日、日本高血圧学会誌電子版に掲載される。
チームは、2001~13年に同センターに慢性心不全で入院した約5200人のがん発症率を計算した。
その結果、慢性心不全患者のがん発症率は2・27%で、このうち心不全と診断された後にがんが発見された人では0・99%だった。国立がん研究センターが公開している日本人全体の発症率(0・59%)の1・7倍で、心不全とがん発症に強い関係が認められた。
(2017年4月7日 読売新聞)
加齢と睡眠の質と認知症の関係
年をとるにつれて睡眠習慣が変化する人は多いが、一部の高齢者では、それに伴って深く良質な睡眠をとる能力も失われることが分かった 。この知見は、米カリフォルニア大学バークレー校のBryce Mander氏らが睡眠と加齢に関する医学文献を分析したレビューで示唆したもの。
Mander氏は、「高齢者に生じる睡眠の“断片化”は健康に影響し、うつ病や認知症など多くの疾患とも関連している。睡眠が断片化されると、夜中に何度も目を覚まし、深い睡眠段階がなくなってしまう」と話す。同氏らによると、特定の疾患やその治療が睡眠障害を引き起こすことも事実だが、逆に、睡眠の質の低下が疾患を引き起こすこともありうるという。
たとえば、睡眠障害と認知症の進行には「双方向」の関係があることが知られている。認知症の患者では睡眠障害が起きやすく、一方で、睡眠の質の低下は記憶力やその他の認知機能の低下を加速させうる。認知症になると脳内で蓄積されるアミロイドβ蛋白は、深い眠りによって除去されるという動物研究の報告もある。つまり、認知症と睡眠不足が互いに助長しあう「悪循環」に陥る可能性がある。
一方で、高齢者では「早寝早起き」の傾向があり、若い頃よりも睡眠時間がわずかに短くなることも知られているが、こうした睡眠習慣の変化は正常であるという。
「健康に影響する重要な生活習慣因子として、運動や健康的な食生活だけでなく、睡眠にも気を配ることが大切だ」と同氏は述べ、定期的な運動による効果の1つとして、睡眠の質の向上も期待できると指摘。深い睡眠をとる能力は中年期から低下する場合も少なくないため、若いうちからケアをするべきだとアドバイスしている。
(2017年4月5日 HealthDay News)