腸内細菌を使って大腸がんを早期診断する手法を開発したと、大阪大らのチームが米科学誌ネイチャー・メディシンに7日発表した。がんの発症初期にだけ大腸で増える細菌を特定できたためで、チームは「大腸がん検診に使われる便潜血検査と併用すれば、診断の精度向上が期待できる」と指摘する。
チームは、大腸がんやポリープの患者と、健康な人の計616人の便に含まれる細菌を分析。大腸がんの初期段階に腸内で増え、その後は減少する複数の細菌を特定した。チームは「がんの発症で腸内環境が変化したため」と推定する。
この結果を使い、患者の便に含まれる細菌を調べて大腸がんを初期段階から診断する手法も開発。便の中に血が混じっていないか分析し、大腸がんの可能性を調べる便潜血検査と併用すれば、診断精度が向上し、がんを疑われて大腸内視鏡を使った精密検査を受ける人を減らすことができるという。また、今回特定された細菌を増やさないように食事など生活習慣を見直して腸内環境を整えれば、大腸がんを予防できる可能性もあるという。
(2019年6月7日 毎日新聞)
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細菌で大腸がんを早期診断 大阪大らのチーム発表 便潜血検査との併用で精度向上も
厄介ながん見つける目印に 金沢大が「ペプチド」発見
転移したり、薬が効かなくなったりしたがんに集まりやすいとみられる、少数のアミノ酸が結合した「ペプチド」を発見したと、金沢大の酒井克也助教(分子生物学)らのチームが17日付で科学誌ネイチャー・ケミカル・バイオロジーに発表した。厄介ながんを見つける目印として使えれば、画像診断の性能を向上させられるという。
酒井氏らは、がん細胞の転移を促したり、抗がん剤への抵抗性を強めたりするタンパク質「HGF」に結合するペプチドを狙って、探し出した。
(2019年5月22日 毎日新聞)
パーキンソン病の根治・予防薬候補を開発 大阪大チーム
神経難病「パーキンソン病」で、患者の脳に蓄積するたんぱく質の合成を抑制する物質を開発したと、大阪大などのチームが21日、発表した。パーキンソン病を発症するマウスに投与すると、症状が表れにくくなったという。今後、創薬に向け、サルなどの実験を通じて安全性を確かめる。論文が同日、英電子科学誌に掲載された。
患者の脳内では、たんぱく質「α―シヌクレイン」が異常な構造になって蓄積し、神経がダメージを受けている。情報を伝える脳内物質「ドーパミン」の減少を補う対症療法はあったが、根治や予防ができる薬はなかった。
研究チームは、α―シヌクレイン合成の途中段階で作られる伝令RNA(mRNA)に結合し、分解を促す物質(核酸)を作製した。マウスの実験で、α―シヌクレインの量を4~5割程度抑制できたという。
(2019年5月21日 毎日新聞)
インフル防御機能、乾燥で低下…ウイルス排出鈍り
冬にインフルエンザに感染しやすくなるのは、空気の乾燥によって体の防御機能が低下することが一因だとする研究成果を米エール大などがまとめた。論文が13日、米科学アカデミー紀要に掲載された。研究チームは「加湿の重要性を改めて示した成果だ」としている。
工藤恵理子・エール大研究員らは湿度10%と50%の環境で別々に飼育したマウスについて、呼吸時に空気の通り道となる気道の粘膜を調べた。湿度10%で育てたマウスは、異物を運び出す繊毛と呼ばれる粘膜上の器官の動きが鈍り、ウイルスを外に排出する能力が低くなっていた。
(2019年5月15日 読売新聞)
カルシウム濃度低いと認知症に?…軽度認知障害の人に血液検査
認知症の一歩手前の軽度認知障害から認知症の一つのアルツハイマー病に進んだ人は、進まなかった人に比べて血液中のカルシウム濃度が低かったとの研究結果を、東京大講師の岩田淳さんらが発表した。
カルシウム濃度が一定基準に満たなかった109人のうち、58・7%がアルツハイマー病へ進行。一方、基準以上の125人で進行したのは45・6%にとどまった。
カルシウム濃度によって違いが生じた詳しい理由は分かっていない。ただ、カルシウムを体内に吸収する働きがあり、記憶力と関係があるとされるビタミンDが、欠乏していることを示している可能性が考えられるという。
認知症予防に効果があると言われる適切な食事や運動は、カルシウム濃度を高める働きもある。岩田さんは「乳製品を取り入れた食事や適度な運動など、認知症になりにくい生活習慣を勧めることを後押しする結果が出た」と話している。
(2019年3月26日 読売新聞)
心身の虚弱状態「フレイル」を防ぐ食事摂取基準、たんぱく質の割合など改定
「フレイル」と呼ばれる心身の虚弱状態を防ぐため、65歳以上の人は毎日、体重1キロ・グラムあたり1グラム以上のたんぱく質を取ることが望ましい――。
厚生労働省が高齢者の食事に関し、こんな目安を初めて示した。
フレイルは、加齢に伴って筋力や認知機能が衰えて日々の活動が低下する状態で、放っておくと介護が必要になる。フレイル対策では軽い運動に加え、食事の改善が重要だ。
厚労省は健康を保つための食事の基準をまとめた「食事摂取基準」の改定案に、フレイル予防の目安を盛り込んだ。例えば体重50キロの人の場合、食事を通じて最低1日50グラムのたんぱく質摂取が必要になる。
食事摂取基準は、5年に1度見直される。厚労省は近く改定案を決定し、来春から新基準を適用する。
(2019年3月11日 読売新聞)
がん免疫治療薬、筋肉量が多いと効果長続き…阪大チーム研究
「オプジーボ」などの新しいがん免疫治療薬の効果は、筋肉量が多い患者ほど長続きするという研究結果を、大阪大のチームがまとめた。「筋肉量が、薬の効果を予測する指標の一つになる可能性がある」としている。論文が英科学誌サイエンティフィック・リポーツに掲載された。
体内の免疫を活性化させてがんを攻撃するオプジーボや「キイトルーダ」は、一部の患者には劇的な効果があるが、どの患者に効くかを事前に予測することは難しかった。
チームは、オプジーボやキイトルーダの投与を受けた肺がん患者42人を対象にアジア人の平均的な筋肉量と比較し、筋肉量が多いグループと少ないグループに分け、薬の効果を調べた。
その結果、筋肉量が多いグループ(20人)では、薬の効果が7か月ほど続いたのに対し、筋肉量が少ないグループ(22人)は2か月ほどしか続かなかった。効果が1年以上続いた人の割合も、筋肉量が多いグループの方が多かった。
チームの白山敬之特任助教(呼吸器内科)は「筋肉からは、がんの増殖を抑える物質が分泌されているとの報告もある。治療効果を上げるため、運動などで筋肉量を維持する取り組みが大切になるかもしれない」と話す。
(2019年2月25日 読売新聞)
老化物質抑えると、寿命延びた…ハエで実験成功「健康長寿に生かせる可能性」
老化によって増える特定のたんぱく質の働きを抑えることで、ショウジョウバエや線虫の寿命を延ばすことに成功したと、吉森保・大阪大教授(細胞生物学)らのチームが発表した。このたんぱく質は人にもあり、チームは「健康長寿に生かせる可能性がある」としている。
このたんぱく質は、吉森教授らが2009年に発見した「ルビコン」。細胞内で不要なたんぱく質を再利用する「オートファジー」の作用を抑える働きがある。
チームは今回、ショウジョウバエや線虫の体内では、老化するにつれてルビコンの量が1・5~2倍に増えることを確認。それぞれ遺伝子操作でルビコンを作れなくして寿命や健康への影響を調べた。
その結果、ショウジョウバエと線虫は寿命が最大約2割延びた。また、老化による運動機能の低下も防げた。
(2019年2月20日 読売新聞)
インフルエンザの免疫、腸内細菌が作る…東大・医科研チームが発表
腸内細菌が体内で作る物質がインフルエンザウイルスに対する免疫反応を向上させる可能性があると、東京大医科学研究所の一戸猛志准教授らのチームが発表した。論文が米科学アカデミー紀要に掲載された。
腸内細菌は食物繊維を消化して人間などの重要な栄養源「 短鎖たんさ 脂肪酸」を作っている。チームは、インフルエンザウイルスへの免疫反応が低下したマウスに、酢酸と酪酸、プロピオン酸の3種類の短鎖脂肪酸を投与した。その結果、インフルエンザウイルスを排除する免疫反応が回復したという。
(2019年2月13日 読売新聞)
認知症、腸内細菌の構成が影響か…国立長寿医療研究センターなど発表
認知症と腸内細菌の構成が強く関連しているとする研究結果を、国立長寿医療研究センター(愛知県大府市)などのチームが発表した。。
チームは2016年3月~17年3月、同センターのもの忘れ外来を受診した認知症患者34人(74~82歳)と、認知症でない94人(68~80歳)の便に含まれる細菌の種類を比較した。
その結果、腸にすみついているバクテロイデスという細菌は、認知症でない人の45%から検出されたのに対し、認知症患者からは15%にとどまるなど、両者の腸内細菌の構成は大きく異なることが分かった。
同センターのもの忘れセンター副センター長・佐治直樹さんは「食事で腸内細菌の構成を整えることで、認知症を抑えられるようになることも考えられる」と話しており、認知症と腸内細菌の関係をさらに調べるとしている。
(2019年2月12日 読売新聞)