国立がん研究センター(東京都中央区)などの研究チームは17日、血液1滴を使った検査法で卵巣がんを98・8%の高率で判別することに成功したと、国際科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に発表した。卵巣がんは自覚症状が出にくいため、早期発見や治療向上につながる成果として期待される。
チームは、細胞から血液中に分泌される微小物質「マイクロRNA」の変動パターンが、がんの有無の判別に使えることを突き止め、13種類のがんで正解率95%以上という検査法を開発している。
(2018年10月18日 読売新聞)
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血液1滴で、卵巣がんを98・8%の精度で判別…国立がん研究センターなど成功
アルツハイマーに遺伝子治療、マウス実験では記憶力回復
東京医科歯科大の岡沢均教授(神経病理学)らのチームは、3大認知症の一つである「アルツハイマー病」の遺伝子治療法の開発に乗り出す。マウスの実験では低下した記憶力が回復したとし、論文が英科学誌に掲載された。
アルツハイマー病では、異常なたんぱく質「アミロイド β 」が脳内に蓄積し、神経細胞が死滅する。患者は年々増えており、2025年には高齢者の5人に1人がかかるとされるが、根本的な治療法はまだない。
研究チームは、マウスの脳などを調べ、アミロイドβがたまり始める前に、神経細胞のつなぎめ(シナプス)を作るのを促すたんぱく質が減ることを突き止めた。このたんぱく質を作る遺伝子をアルツハイマー病のマウスに投与したところ、シナプスが正常に作られ、記憶力も回復したという。岡沢教授は「1回の治療で効果が長期間持続することが期待できる」としている。
(2018年10月9日 読売新聞)
関節リウマチ 悪化遺伝子…京大チーム特定、新しい治療法期待
全身の関節に炎症が起きる「関節リウマチ」で、炎症悪化の鍵となる遺伝子を特定したと、京都大のチームが発表した。既存薬が効かない患者への治療法開発につながることが期待される。
関節リウマチは、免疫が過剰に働いて手や指などの関節が腫れ、関節や骨が変形する原因不明の病気。国内に70万~100万人の患者がいるとされ、免疫を抑える抗リウマチ薬などが治療に使われているが、患者の2~3割は薬が効きにくいという。
チームは、炎症を促すたんぱく質を分泌する免疫細胞の一つ「ヘルパーT細胞」で、特定の遺伝子が強く働いていることを解明。炎症を起こしている患者の関節でもこの遺伝子が働いており、チームの吉富啓之・京大准教授は「この遺伝子が働くことが炎症の源流といえ、新しいタイプの治療薬が開発できる可能性がある」としている。
(2018年9月22日 読売新聞)
サンマ1匹半を3か月分「不安やわらげる効果」…国立がん研究センター
サンマやサバといった青魚に多い油成分「オメガ3系脂肪酸」に、一部の精神疾患や心筋 梗塞 などの患者の不安を和らげる効果があるとする研究成果を、国立がん研究センターのチームが発表した。サンマ1.5匹に含まれる量(2グラム)を毎日、3か月程度取れば効果が認められるという。
オメガ3系脂肪酸には、血中の中性脂肪を低下させるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)などがあり、常温でも固まりにくいという特徴がある。
チームは、これらの成分を含む栄養補助食品(サプリメント)が不安を和らげる効果について、今年3月までに論文として発表された臨床試験19件の結果を分析した。
臨床試験の規模は、米国や日本など11か国で計2240人。臨床試験には、薬物依存や心的外傷後ストレス障害(PTSD)、急性心筋梗塞などの患者と、健康な人が参加した。その結果、サプリメントを飲んだ人たちは「気持ちが落ち着かない」「どきどきして心細い」といった不安が和らいでいた。不安の軽減効果は、健康な人より、病気を抱える患者の方が大きかった。オメガ3系脂肪酸の有効な摂取量の目安は2グラムだった。
(2018年9月18日 読売新聞)
「糖尿病予備軍」でも糖尿病性腎症のリスク
糖尿病とは診断されないが、肥満やわずかな糖代謝異常のある「糖尿病予備軍」の人も糖尿病性腎症を発症する恐れがあると、大阪市立大の津田昌宏講師(腎臓内科学)らが14日、米糖尿病学会誌に発表した。糖尿病性腎症は進行すると治癒しにくい。早期発見と治療が重要で、津田講師は「糖尿病になる前から腎症をチェックできる制度が必要だ」と指摘している。
さらに津田講師は「肥満の人は糖尿病になる前段階でも腎症を発症しやすいことが分かった。早期発見のため、アルブミン検査の保険適用対象を拡大すべきだ」と話している。
(2018年9月14日 毎日新聞)
「食品種類多いと健康寿命延びる」研究結果、日本は2位
摂取する食品の種類が多いほど、日常生活を支障なく過ごせる「健康寿命」が延びる。そんな研究結果を、名古屋学芸大健康・栄養研究所長の下方浩史教授(老年医学)らの研究グループが17日、発表した。2010年度、日本は食品の種類の多さは世界2位で、健康寿命は最も長かった。
研究グループは、国連の食物供給量のデータなどから、人口100万人以上の世界137カ国の食品の多様性をスコア化して計算。健康寿命は、健康でない生存年数などから推定した健康度調整平均寿命を用いて、1995年~2010年の状況を解析した。
その結果、10年度の食品の多様性スコアは1位ニュージーランド、2位日本、3位スペインだった。健康寿命は1位日本73・6歳、2位スペイン71・9歳、3位スイス、イタリア71・7歳で、食品の多様性が高いほど、健康寿命が長い傾向にあった。また、平均寿命と健康寿命の差である「不健康な期間」の割合も小さい傾向にあり、日本は世界で3番目に短かった。
下方教授は「食材の種類が少ないと摂取栄養素に偏りが生じやすい。多彩な食材を摂取することが栄養素の充足につながり、疾患を予防しているのではないか」と話した。
(2018年8月17日 朝日新聞)
抗がん剤の効果を予測する新手法、京大チームが開発
別の臓器へのがん転移が見つかった大腸がん患者に対し、どの抗がん剤が有効かを精度よく予測する手法を開発したと、京都大の研究チームが発表した。実用化されれば、患者ごとに最適な種類の抗がん剤を選ぶことができ、効率的な治療が可能になるという。
肝臓や肺などへの転移が見つかった大腸がん患者には、手術のほか、抗がん剤治療も行う。ただ、抗がん剤の効き方は個人差が大きく、どの種類が効くかは実際に投与し、しばらく経過観察しないとわからない。このため、症状が進行してしまうケースもあった。
チームは患者のがん組織から、がんの増殖や転移に関わる「がん幹細胞」と呼ばれる細胞を取り出し、体外で大量に増やす技術を開発。増えたがん幹細胞を複数のマウスに移植してがん化させ、それぞれ別の抗がん剤を投与して、効果を比較する試験を考案した。
京大病院で治療を受けた患者7人から切除したがん組織を使い、この手法の精度を確かめたところ、7人それぞれに効き目のあった抗がん剤が、マウスでも全て有効と判定できたという。
チームの 武藤 誠・京大特命教授(実験腫瘍学)は「この手法なら、無駄な抗がん剤治療を防ぐことができ、医療費の抑制にもつながる」と話す。論文は米医学誌電子版に掲載された。
佐谷秀行・慶応大教授(腫瘍生物学)の話「新たながん治療薬の開発にも応用できる成果だ。今後は、より多くの患者で試験の精度を確かめる必要がある」
(2018年8月14日 読売新聞)
メタボの人、減ってません 国の健康計画、6割は改善
厚生労働省は2日、平成25~34年度の10年間にわたる国民の健康づくり計画「健康日本21」で定めた、肥満度や生活習慣に関する数値目標の達成状況を公表した。全53項目のうち介護を受けたり、寝たきりになったりせずに日常生活を送れる「健康寿命」など約6割で改善がみられたが、メタボリック症候群の人数など横ばいの項目もあった。近く中間報告書をまとめ、残りの期間での目標達成を目指す。
メタボリック症候群の該当者と予備軍は、計画策定時の約1400万人から約1412万人とやや増加。体格指数(BMI)が25以上の「肥満」の人の割合も、20~60代男性では31・2%から32・4%と微増していた。
肥満傾向の子どもは、小学5年生を見ると、男子4・60%、女子3・39%から、男子4・55%、女子3・75%とあまり変わっていなかった。
成人の喫煙率は19・50%から、18・30%と微減にとどまった。
(2018年8月3日 産経新聞)
口の中のキズ、早く治る仕組み 米研究チームが解明
口の中の傷が早く治るのは、遺伝情報を制御する特定のたんぱく質が作用しているためだと、米国立保健研究所(NIH)などの研究チームが明らかにした。患者の傷を早く治す治療法の開発に役立つと期待される。
口内の傷は早く治ることが昔から知られているが、科学的な解明はされていなかった。研究チームは、健康な人間30人の口の中と皮膚に傷を付け、治る過程で組織を採取して調べた。
口内と皮膚の傷の組織では、発現した遺伝子パターンに明確な違いが現れた。口内の細胞には、遺伝情報を制御する「転写因子」と呼ばれる特定のたんぱく質が、皮膚細胞より多かった。
この転写因子によって傷を早く治すことができると考えられるという。
(2018年7月26日 朝日新聞)
パーキンソン病とALSの遺伝子治療、来年にも治験…数年後の治療薬実用化目指す
運動障害などを引き起こす難病「パーキンソン病」や、全身の筋肉が衰える難病「筋萎縮 性側索硬化症(ALS)」の患者に、正常な遺伝子を投与する遺伝子治療の臨床試験(治験)を、来年にも自治医科大などのチームがそれぞれ始める。1回の治療で長期間、症状改善や病気の進行を抑えられる可能性があり、数年後の治療薬の実用化を目指している。
治験では、複数の正常な遺伝子をウイルスに入れて作った治療薬を、患者の脳に注入する。一部の遺伝子を患者の細胞に注入する臨床研究では、目立った副作用はなく、運動障害の改善もみられたという。
また、ALSは特定の酵素の減少が筋肉の萎縮にかかわっているとされ、治験ではこの酵素を作る遺伝子を入れた治療薬を脊髄周辺に注入。世界初の試みだが、マウスでは、病気の進行を抑える効果が確認されたという。
(2018年7月13日 読売新聞)