今月のくすりの話では、直接的にお薬とは関係ないですが、香りと記憶の関係についての研究事例をご紹介いたします。
臭覚に関する研究は、近年盛んに行われ、ニオイと記憶の関係についても徐々に知られるようになってきました。
Raschらは、バラの香りを嗅がせることによって、記憶力をアップさせることを報告しています。
実験では、バラの香りがする部屋でコンピュータ画面上に示された15種類のカード配置を記憶してもらい、その後睡眠させて「ノンレム睡眠」(深い眠り状態)に入ったときに再びバラの香りを嗅がせました。
次の朝、バラの香りを嗅がせたグループとバラの香りを嗅がせていないグループで、カード配置の記憶を比較したところ、バラの香りを嗅いでいるほうが明らかに記憶力が高かったそうです。
さらに、学習前に香り刺激を呈示しなかったグループの記憶力上昇は認められなかったとのことです。
即ち、睡眠中の記憶力を高めるためには、睡眠前の学習時にも香り刺激を与えることが必要と思われます。
記憶の形成には、睡眠が重要であると考えられていますが、本研究によって記憶が睡眠中に脳で統合されているメカニズムの一部が証明されたことになります。
さらに、動物では新しい迷路を学んだマウスは、睡眠中に迷路図を復習しているという報告もあり、動物は睡眠中に新しい記憶を再学習していると言われていますが、人においても同じことが言える可能性もあり、睡眠と記憶の関係が今後さらに解明され、これに香り刺激による脳の活性化のメカニズムを加えることで、アルツハイマー病や脳神経障害に対する有効な治療手段が考案できる日が来るかも知れません。
睡眠は、身体を休めるだけでなく、神経のバランス、免疫力の上昇、記憶力の上昇と、様々な影響を及ぼしていますので、しっかり睡眠をとることも重要ですね。
学生さんも、勉強の時間も大切ですが、不用意に夜更かししないで、睡眠をとることも 大切ですね。
(参考;日本薬学会 ファルマシア1月号)
