京大:カーボンナノチューブに近赤外線でがん細胞死滅成功
炭素でできた極小の素材「カーボンナノチューブ」に近赤外線を照射して活性酸素を効率よく発生させ、がん細胞を死滅させることに京都大の村上達也助教(細胞工学)の研究グループが成功、19日発表した。医療技術への応用が期待される。米化学会誌の電子版に近く掲載される。
カーボンナノチューブに光を照射すると、熱や活性酸素が発生することが知られており、がん治療の可能性を探る研究が各国で進められている。
グループは、赤外線の一種で、透過性が高く人体への影響が比較的小さい「近赤外線」を利用することを考案。さらに、カーボンナノチューブの中でも「半導体性」と呼ばれる性質を持った部分だけが近赤外線を吸収して活性酸素を出すことを突き止めた。
そこで、この成分を分離・濃縮し、ヒトの肺がん細胞と混ぜて近赤外線を10分間照射したところ、熱による影響も含め45%の細胞が死滅したことを確認した。
村上助教は「微量のカーボンナノチューブを血管から注入し、患部に近赤外線を照射する治療法が考えられるのではないか」と話している。
カーボンナノチューブは、六角形に結合した炭素原子が円筒形につながった物質で、筒の直径は数ナノメートル(ナノは10億分の1)。鋼鉄より硬く、弾力性があり、電気や熱を通す性質から、医療機器などでの応用が期待されている。
2012.10.20 毎日新聞
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