細胞内に侵入したウイルスなどの病原体を撃退するたんぱく質「インターフェロン(IFN)」の合成が促進される仕組みを解明したと、奈良先端科学技術大学院大や大阪大の研究チームが発表した。
免疫機能を高める薬剤の開発に生かせる可能性があるという。米科学誌「セル・ホスト&マイクローブ」電子版に15日掲載される。
IFNは免疫で働くたんぱく質の代表格で、ウイルス性肝炎の治療薬として広く用いられるほか、抗がん剤としても使われている。細胞内には、IFNを作る遺伝子の「スイッチ」を入れるたんぱく質があることはわかっていたが、どのような仕組みでスイッチが入るのかは不明だった。
奈良先端大の河合太郎准教授(免疫学)らはマウスの細胞を用い、スイッチを入れるたんぱく質を活性化する物質を探索。その結果、細胞がウイルスに感染すると、細胞膜にある「イノシトール5リン酸」という物質が増殖してこのたんぱく質と結合し、IFNの合成が促進されることを突き止めた。
河合准教授は「将来的には、毒性が低くて安全なワクチンなどの開発に使えるかもしれない」と話す。
(2013年8月15日 読売新聞)