不整脈の治療薬が、アルツハイマー病で起こる脳の神経細胞の減少を防ぐ効果があるとのマウスの実験結果を、国立長寿医療研究センター(愛知県)や理化学研究所(埼玉県)などのチームが、英科学誌ネイチャーコミュニケーションズ電子版に発表した。
この薬は不整脈や気管支ぜんそくの治療に使われる「イソプロテレノール」。チームの高島明彦・同センター分子基盤研究部長は「認知症の進行を止める世界で初めての薬になるかもしれない」と話している。
アルツハイマー病患者では、神経細胞の中で「タウ」と呼ばれるたんぱく質が異常に集まり、細胞が死ぬことが知られる。チームは、特定の構造の薬剤が、タウが集まるのを抑えることを発見、同じ構造を持つイソプロテレノールに着目した。
タウが過剰に作られ認知症のような症状を起こすマウスは通常、3カ月後に神経細胞が11~28%減るが、イソプロテレノールを餌に混ぜて投与したところ、3カ月後でも減らなかった。脳機能の低下や行動の異常も抑えられた。
(2015年12月17日 毎日新聞)