体内の異物を取り除く白血球の働きを抑える化合物を、九州大学生体防御医学研究所の福井宣規(よしのり)教授(免疫遺伝学)らの研究グループが特定した。人間にとって欠かせない白血球の免疫システムだが、臓器移植の手術時には拒絶反応が起きる原因にもなっており、治療薬への応用が期待される。
福井教授らはこれまでの研究で、免疫細胞の活性化をコントロールするたんぱく質「DOCK2」を特定していた。今回はDOCK2の働きを抑える化合物を1万種類近いリストから見つけ出し、「CPYPP」と命名した。移植医療のほか、リウマチや膠原(こうげん)病など免疫の過剰反応によって起きる難病治療に使える可能性もあるという。
臨床現場では効果を上げている免疫抑制剤もあるが、大量投与による腎機能障害の副作用も指摘されている。研究グループはCPYPPをもとに、より効果が高い化合物の解明を進めており、既存薬と併用できる新薬の開発につなげたいという。福井教授は「現時点では良い免疫細胞にも影響を与えてしまうが、化合物を特定できたのは臨床応用への大きな一歩」と話す。
2012.4.20 毎日新聞
コメントを残す