京都大と検査機器大手のシスメックス(神戸市)は25日、本庶佑・京大特別教授らが発見したたんぱく質「PD-1」の血中濃度を高感度で測定する技術を開発したと発表した。PD-1の研究から生まれたがん免疫治療薬「オプジーボ」の治療効果や副作用の予測を可能にする研究への活用が期待される。
(2019年9月25日 毎日新聞)
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がん免疫治療薬の効果予測 京大などが測定技術開発
モニター画面3分眺めるだけ、認知症をチェック
モニター画面に映る画像を3分ほど眺めるだけで認知機能をチェックできるシステムを、大阪大の森下竜一教授らの研究チームが開発した。従来の面談による検査方法より負担が軽く、高齢者の運転免許更新時の検査などへの活用が期待できるという。
研究チームは、画面上に映し出された複数の図形の中から同じものを選ぶなど、クイズ形式のアニメーション計8問を作成。モニターの下に設置した赤外線カメラで視線の動きを追跡し、その反応から、短時間の記憶や集中力、図形を読み取る力などを人工知能(AI)で評価できるようにした。
実際に健康な人や認知症の疑いがある人ら50~90歳代の計80人に受けてもらったところ、年代を問わず抵抗感がなく、一般的な検査方法とほぼ同じ結果が得られたという。
(2019年9月17日 読売新聞)
大豆食べるとCOPD予防? 大阪市立大「1番は禁煙」
大阪市立大の研究チームが、大豆などに含まれるイソフラボンに、肺気腫や慢性気管支炎などの慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)の予防効果があることを、マウスの実験で確かめた。研究成果は29日、科学誌ニュートリエンツ(電子版)に掲載された。
COPDは、主にたばこの煙が原因で息切れや呼吸困難になる病気。WHO(世界保健機関)によると、2016年の世界の死因の3位に位置づけられ、国内の患者数は約500万人と推定される。大豆製品を多くとる人がCOPDにかかりにくい傾向が確かめられていたが、仕組みはわかっていなかった。
研究チームは、マウスに1日1時間、計12週間にわたってたばこの煙を吸わせ、喫煙やイソフラボンの有無による違いをみた。その結果、たばこの煙を吸った集団は、吸わなかった集団に比べて体重が増えにくい傾向があることを確認。また、煙を吸ったマウスでは、0・6%のイソフラボンが入ったえさを与えた集団の方が、入っていないえさの集団に比べて、気管支や肺胞の炎症や、肺気腫の進行が抑えられていた。
同大の浅井一久准教授(呼吸器内科学)は「COPDの予防には禁煙が第一だが、イソフラボンが肺気腫の進展を抑えられることが証明できた。発症や進展を抑える治療につなげられる可能性がある」と話す。
(2019年8月29日 毎日新聞)
肝臓がん「生存期間2倍に」…近大など新治療法
進行した肝臓がん(肝細胞がん)の新しい治療法で、生存期間が2倍近く延ばせるという研究成果を、近畿大などのチームが発表した。肝臓がん患者の大半が進むとされる難治性の「中等度進行がん」が対象で、チームは「近い将来、世界の標準治療になる可能性がある」と期待する。
肝細胞がんは、大小様々の腫瘍が多発することが多く、腫瘍を一つずつなくす局所治療が軸になる。腫瘍が3センチ以下または3個以下の早期がんの場合は、手術などで取り除く。取りきれなければ抗がん剤治療に切り替える。
再発しやすく、患者の9割は中等度進行がん(ステージ2~3)に至る。
この段階では、肝臓に栄養を送る動脈をふさいでがんを「兵糧攻め」にする局所治療を先に行い、抗がん剤を投与するのが世界の標準治療だ。しかし、何度も兵糧攻めをすると肝臓全体が弱り、その後の薬の効き目が落ちる難点があった。
(2019年8月5日 読売新聞)
聴力低下にメタボ関係 国際医療研究センター、5万人8年追跡
メタボリック症候群は、聴力の低下にも関係していることが国立国際医療研究センターなどの大規模疫学研究で判明した。
同センター疫学・予防研究部の溝上哲也部長らの研究チームが、関東・東海地方に本社のある企業十数社の従業員計約10万人を対象としたJ-ECOHという研究の一環として実施。平成20~23年度の健康診断で聴力が正常だった20~64歳の約5万人を最大8年間追跡調査した。
対象者を「体格指数(BMI)が25以上の肥満か」と「血圧・血糖・中性脂肪・善玉コレステロールの値が2項目以上メタボリック症候群の基準に該当するか」との条件で4グループに分け、1000ヘルツ未満の低音域と4000ヘルツ超の高音域で、聴力低下が起きるリスクを比較した。
その結果、BMI25未満の非肥満のグループを1としたときの25以上30未満のリスクは低音域で1.22倍、30以上では1.72倍になった。高音域でも同じく太っているほどリスクが高かった。
研究チームは、高血圧や代謝異常による動脈硬化で血管が狭まったりふさがったりし、耳への血流が減少すること、肥満に伴う酸化ストレスや炎症、低酸素などで聴覚細胞が損傷することなどが影響するとみている。
(2019年7月30日 産経新聞)
パーキンソン病の新薬候補を発見 マウスで効果確認
手足の震えや体のこわばりなどの症状が出る難病パーキンソン病の新薬候補を、大阪大学などのチームが見つけた。病気の症状が出るマウスの脳内に入れると、手足の動きが改善したという。
パーキンソン病の約1割は遺伝性で、「αシヌクレイン」というたんぱく質をつくる遺伝子の数が他の人より多い。αシヌクレインが脳内に過剰にたまると病気を引き起こすと考えられており、たんぱく質の増殖を抑える研究が進んでいる。
阪大の望月秀樹教授(神経内科)らは、たんぱく質が作られる途中にできる「リボ核酸(RNA)」に注目。RNAとくっつき、たんぱく質の合成を抑える「核酸医薬」の候補となる物質を発見した。
この物質をαシヌクレインが脳内にたまった状態のマウスの脳に入れると、入れなかったマウスと比べ、歩行や手先の動作などの行動障害が、およそ4~5割改善したという。
(2019年7月17日 朝日新聞)
乳がんの増大や転移に自律神経が深く関与 岡山大などのチーム研究
乳がんの増大や転移に、生命維持に重要な呼吸器や循環器などの活動をコントロールする自律神経が深く関与しているとする研究結果を、岡山大や国立がん研究センターなどのチームが英科学誌「ネイチャー・ニューロサイエンス」(電子版)で発表した。抗がん剤など一般的な治療が効かないがんに対し、遺伝子治療などで自律神経を操作して、がんを抑制する新しい治療法の開発が期待される。
乳がん患者29人のがんの組織を顕微鏡で調べたところ、がん組織に交感神経が入り込んでいることを発見した。また、再発しないで生存する割合が、がん組織内の交感神経の密度が高い患者は、低い患者と比べて少なかった。
さらに、がん組織に入り込んだ交感神経の遺伝子を操作し、この交感神経を除去したところ、乳がんと転移がんを抑制できた。
(2019年7月9日 毎日新聞)
難治性肺がんの増殖抑える物質「完治に期待」阪大グループ
肺がんの中でも進行が早くて治りづらく、再発率も高い「小細胞肺がん」で、増殖に関わるたんぱく質の合成を抑制する物質を開発したと、大阪大などの研究チームが英科学誌で発表した。人の肺がん細胞を移植したマウスに投与し、がん細胞が死滅することを確認した。チームは治療薬開発に向け、大型のラットで効果と安全性を確認するという。
たんぱく質の「SRRM4」が関わってがん細胞が増殖し、抗がん剤に対する耐性を持つなど悪性化することが知られている。耐性を持つと治療法がなく、完治が困難になる。
このたんぱく質の合成の前に作られる伝令RNA(mRNA)に結合し、分解を促す物質(核酸)を作製。マウスの実験では、がん細胞を8割程度死滅させられた。
(2019年7月5日 毎日新聞)
特産ミカンに肥満抑制効果 茨城大が発表
茨城大などの研究グループは、茨城県の筑波山麓で栽培されている「福来(ふくれ)みかん」の果皮を食べることで、肥満抑制などの効果が期待できるという実験結果を発表した。福来みかんは、直径3~5センチの小ぶりな果実と薄い皮が特徴で、果肉は甘みが少なくすっきりとした酸味がある。
研究グループは、マウスを使い、一方のグループには高脂肪食だけを、別のグループには福来みかんの果皮の粉末を5%混ぜた高脂肪食を与える実験を行った。
4週間にわたって体の状態の変化を比較したところ、果皮入りの餌を食べたグループは体重の増加量が約半分で、血中のコレステロール量と中性脂肪レベルも低かった。
マウスにストレスを与え続けて比較した実験でも、福来みかんの果皮の粉末を混ぜた餌を食べたグループにストレス抵抗性が増すという傾向が示された。
(2019年6月18日 産経新聞)
老化抑える血中たんぱく質発見 マウスで寿命延長確認
血液中の「NAMPT(ナムピーティー)」というたんぱく質に老化を抑え、寿命を延ばす働きがあることがマウスの実験で分かったと、日米の共同研究チームが発表した。
人間にもNAMPTがあり、責任著者の米ワシントン大(セントルイス)の今井真一郎教授(老化学)は「創薬につながる可能性は十分ある」と話す。
発表によると、マウスは老齢にあたる生後18カ月で、血液中のNAMPT量が6カ月の時より雄で33%、雌で74%減少していた。量を測定後に生きた期間を調べると、量から余命を予測できるほどの強い関連性があった。
NAMPTを多く作るマウスを作製したところ、老齢になっても、回し車を回す身体活動能力が高い▽記憶・学習能力が高い▽インスリン分泌量が多い▽網膜の機能が高い――など、老化が抑えられた。
また、若いマウスの血中からNAMPTを取り出し、老齢マウスの腹部に週1回、3カ月間注射すると、寿命が15・8%延びたという。
(2019年6月14日 毎日新聞)