最近、アンチエイジングの研究の中で、「NMN」という物質がにわかに注目されています。
「NMN」とは、ニコチンアミド・モノヌクレオチドの略で、生命維持に欠かせない補酵素として知られ、健康と寿命を司るサーチュイン遺伝子を活性化することが知られています。
少し前になりますが、NHKの番組でもブドウの皮などに含まれるポリフェノールの1種のレスベラトロールが「サーチュイン遺伝子」を活性化させることが放映され話題となりましたので、「サーチュイン遺伝子」という言葉は、耳にしたことがあるのではないでしょうか。
人生100年時代と言われて久しいですが、加齢とともに筋力も衰え、肌にシミやシワが目立つようになり、視力や体力が落ちてくることや、さらには、病気のリスクも高まり、認知症も気になってくると、手放しで喜んでばかりいられません。
このような老化に伴う悩みが解消されれば、「健康長寿」として大いに歓迎されるところです。
そこで「NMN」が「若返りの秘薬」としてにわかに注目されてきたわけですが、「NMN」は、もともと人間の身体の組織や細胞に存在する物質で、体内でNAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)に変化し、老化や寿命をコントロールするサーチュイン遺伝子をつくりだし、全身のさまざまな機能を回復させることがわかっています。
NMN研究の第一人者のワシントン大学医学部教授の今井眞一郎氏らの研究グループは、2007年からマウスを用いた研究をスタートし、1年間毎日「NMN」を与えたところ、見た目、運動能力、活動量が細胞レベルで若返り、明らかな老化抑制効果が認められたことを発表しています。また、本年4月には、55歳~75歳の閉経後の糖尿病予備軍で肥満女性25名による臨床試験を行い、糖の取りこみ機能の改善が見られたことを論文で発表しています。
今井眞一郎氏によれば、「NMNは、老化を食いとめ、健康寿命を延ばすことが期待される物質です。ところが、体内のNMN量は加齢によって減少し、それに伴い、NAD量も減っていきます。
そこで、化学的に生成されたNMNを、体外から補充することを考えたのです。
現在はヒトを対象にした臨床試験も重ねており、その結果は、近いうちに発表できると思います。とはいえ、人間における抗老化作用が確認できるまでには、もう少し時間がかかるでしょう。
NMNはまだ研究段階で、解明できている点もあれば、解明されていない点もあります。それを理解し、しっかり研究に取り組んできた専門家が発信する情報に基づき、納得の上で活用いただきたいですね」と述べています。さらに現在では、NMNの脳への作用を重点的に研究しており、その結果は年内には発表される見込みだそうです。
以上のように「NMN」は、アンチエイジング分野で注目されている成分ですが、上述のレスベラトロールのサーチュイン遺伝子活性化作用は、ミトコンドリア増加作用によるものと考えられていることから、「NMN」のこれらの作用もミトコンドリアの増加作用に関与している可能性が考えられます。
ミトコンドリアの増加作用といえば、皆様ご存知の「PQQ」が有名ですが、その作用はなんと「NMN」の約1,000倍も強いことが実験によって知られていますので、「PQQ」もまたアンチエイジング分野でもますます注目されるようになってくるのではないかと期待されるところです。
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アンチエイジング(抗加齢)で注目される「NMN」
やる気スイッチ「ドパミン」ON!
日常生活で、「なんとなくやる気が出ない」、「何か楽しいことはないかと気が落ち込んでくる」などの経験は、誰でもあることかも知れません。
そんな時は、脳内物質(神経伝達物質)の「ドパミン(または、ドーパミンとも言う)」の分泌が不足気味になっているかも知れません。
ドパミンは、「やる気」や「快楽」にかかわっている脳内伝達物質のひとつで、「報酬系ホルモン」とも言われ、この言葉からもわかるように、努力して結果が出て満足したときなどに分泌される物質で、ドパミンが分泌されると学習能力や仕事の効率が上昇することが期待できます。
それでは、この「ドパミン」を増やすにはどうすればよいのでしょうか?
ドパミンは「報酬系ホルモン」と呼ばれることもあるとお伝えしたとおり、ドパミンを増やすためには自分にご褒美をあげることを意識すると良いと言われています。
例えば、これをがんばったから「前から欲しかった〇〇を買う」、「自分の好きなおいしい〇〇を食べに行く」など、なんでも良いのですが、自分にご褒美をあげることです。
かつてのオリンピックで「自分で自分を褒めたい」というコメントもありましたが、それもご褒美ですね。とにかく自分をたたえて褒めてあげることです。
その他に、有酸素運動や小さな目標を作って達成感を味わうことでドパミンの分泌を促すことができると言われています。
「目標は大きく」とよく言われますが、一方で達成しやすい小さな目標を作って達成感を繰り返すことも大切です。ドパミンは達成感を味わった時に分泌され、その回数が多いほど良いと言われており、小さな目標を達成していく事で継続的にドパミンが分泌され、「やる気スイッチ」が常にONされた状態を保つことができます。
ストレス社会と言われる中、自分にご褒美というより「自分なんか・・・」とネガティブ思考になることも多いのが常かも知れませんが、だからこそ日常生活でドパミンの分泌を増やす工夫をして「やる気スイッチ」をONにする意識を持つことが大切かも知れませんね。
腸内環境を整えることは健康維持の基本中の基本!
「腸内細菌のバランスを整える」とか「腸内環境を整えましょう」などという言葉を耳にする機会が増え、なんとなく健康を維持する上で腸内細菌が重要なカギを握っていそうだということは認識される方も増えてきたように思います。
しかし、一方で健康を維持する上で腸内細菌が重要であることは頭でわかっていても、それがどれほど重要なことかという具体的なことまで知らない方も多いのではないでしょうか。
まだ研究途上にある分野ですので、それもそのはずですね。
でも、「なんとなく健康を維持する上で腸内細菌が重要なカギを握っていそう」ではなく、「健康を維持する上で腸内細菌が重要なカギを握っている」ことは間違いありません。
つい最近までは、腸内には約100種類、約100兆個の細菌が存在すると言われていましたが、最近になって腸内には約500種類以上、1,000兆個近い細菌がいることまでわかってきて、腸内に存在する細菌は「食生活」や「年齢」などによって変化し、例えば「肥満」の腸内細菌叢のパターンが存在するなど、特定の細菌と健康との関わりまでもがわかってきました。
腸内細菌と健康との関わりについては、まだ研究途上ではあるものの、いわゆる善玉菌と言われる乳酸菌などを積極的に摂取することは、私たちの健康を維持していくうえで、予想以上に大切なことかも知れません。
これだけ科学が発展し、なんでもわかっている世の中と思われている方も多いと思いますが、残念ながらわかっていないことの方が多いというのが現状です。
そういう意味から考えて、少なくとも健康に害がなく、健康維持に良いと言われることについては、積極的になんでも試していくことも大切と思われます。
例えば、ヒト由来の乳酸球菌「EF-621K菌」は、アトピーの改善などでもお客様からうれしいお声をたくさん頂いています。
健康維持の一つの選択肢として、「EF-621K菌」が入っている「EF-5K」などの摂取も良いかも知れません。
まさか? 薬の自動販売機?
一部の一般用医薬品は、すでにインターネットやコンビニなどで購入が可能となっていますが、なんと「自動販売機」で薬が購入できるようになるかも知れない時代に突入しています。
はじめに聞いた時は「まさか?」と、耳を疑ってしまいましたが、どうやら本当のようです。
これは「サンドボックス制度」という、参加者や期間を限定し新しい技術を実証実験の中から情報を収集して検証していく制度に大正製薬が参画し、政府が後押しをすることになったことによって、一般用医薬品販売の規制緩和の一環で進められることになりました。
大正製薬では、第二類と第三類医薬品について、東京都品川駅改札内に設置する方向で進めているようです。
規制緩和といえば、最近では処方箋発行されたお薬の受け取りについても「オンライン服薬指導」が認められるようになり、条件を満たせば薬局に行かなくてもお薬を送ってもらえるシステムも話題になっているところです。
今度は自動販売機。でも、自動販売機と言っても薬は薬です。一体どのようなシステムになるのでしょうか?
まずは店舗内から自動販売機が見えるようにカメラを設置することや、店舗と自動販売機は一体としての考えられることから、店舗営業時間内のみ販売可能であること、販売個数などの確認が必要な場合や年齢などの情報提供が必要な場合などは店舗内に誘導する仕組みを構築するなどの一定の条件を満たさなければならないようです。
そのうえで、購入者が購入決定ボタンを押したのちに、店舗内から「販売許可」の操作を行い販売可能となるシステムのようです。
結構面倒な手順があることや、保存状態(温度など)の保証、盗難に対するセキュリティーの確保など、課題はたくさんあるようにも思います。
果たして「自動販売機」のメリットはどれぐらいあるのかと疑問の声もあがっていそうですが、かなりインパクトのある話題であることには違いありません。
このような実証実験を繰り返しながら、医薬品の管理や安全性の確保が確認できた時、徐々に規制緩和が拡大され、自動販売機の設置が店舗の一部ではなくなり、どこにでも設置できるようになり、薬も普通に自動販売機で購入できる時代がやってくるのかも知れません。
果たしてどのような結果が報告されるのか、ちょっと今から気になるところでもあります。
体内時計と健康 ~その2~
「体内時計と健康の関係」については、2018年8月号のくすりの話でご紹介していますが、今回はその第二弾をお伝えさせていただきます。
春になれば「桜の開花」や「うぐいすの鳴き声」などで春を感じるなど、四季を肌で感じることができますが、一方で、人間の知恵によりエアコンの使用などで1年中快適な環境で生活できたり、旬の食材を1年中食べられる時代になってきたことなどにより、季節を肌で感じる機会が少なくなってきました。
しかし、自然界に生息する動物にとっては、四季の環境の変化によって食料が変化するため、環境の変化に適応できるかどうかは死活問題にもつながります。
季節を感じる以外にも、私たちの生活の中で昼夜の環境の変化にも適応していくことも大切で、体内時計が存在していることも知られています。
海外旅行などで経験する「時差ぼけ」も体内時計の狂いが原因となりますが、最近の研究では体内時計の不調が様々な病気とも関わっていることもわかっているのは以前にもお伝えしたとおりです。
体内時計のしくみについての研究では、2017年にはノーベル生理学・医学賞が授与されおり、脳の視床下部にはオーケストラの指揮者の役割のように「親時計」があり、全身の細胞に存在する「子時計」を制御していることがわかっています。
上述の時差ぼけを例にとると、「親時計」は比較的早めに現地の時間に同調できますが、子時計が同調できるまでの時間に差ができるために時差ぼけが発生すると言われています。
寝る前にスマホを見ない方が良いと言われているのは、ブルーライトが体内時計を狂わせて睡眠障害につながるためです。
最近の研究から、マウスに慢性的に時差ぼけを経験させると寿命が縮まったり、腫瘍の成長が加速されたりすることがわかりました。
人における体内時計の狂いは、睡眠障害はもちろんの事、糖尿病、肥満、心疾患、がん、うつ病など様々な疾患と関連します。
冬には眠りが深く、夏は眠りが浅くなることや、冬にうつ症状やだるさなどの精神症状が出やすいのは、日照時間の違いに影響を及ぼしているからと考えられます。
今まであまり注目されなかった「体内時計」をコントロールして病気を治療する治療薬の開発も試みられており、今後の研究の進展によっては、この分野での医薬品が登場する日も近いかも知れません。
いずれにしても健康を維持していくためには、夜更かしを避けて、日常で自然に光を浴びて、旬の食べものなどを含めた季節を感じながら生活することも大切かも知れません。
認知症の予防と改善 サプリメントとの併用も有用!~ 神経伝達物質アセチルコリンに焦点をあてて ~
脳は複雑な神経回路を形成しその機能を営んでいます。その基本となる構造が神経細胞と神経細胞の橋渡しをする「シナプス」と呼ばれる構造ですが、そのシナプスの働きの良し悪しが、脳機能の働きの良し悪しに直結しています。
すなわち、ある情報が脳神経細胞に入ると、シナプスで神経伝達物質が放出され、次の神経細胞の受容体で神経伝達物質を受け取り伝達されていきますが、この伝達がうまくなされなくなったときに脳機能が低下した状態と診断されることになります。
従って、脳機能を維持するためには、
[1] 減少してきた神経伝達物質を増やす
(1)シナプスからの神経伝達物質の放出を刺激する
(2)神経伝達物質の分解を防ぐ
(3)神経伝達物質の合成を促進する
[2] 放出された神経伝達物質をうまく受け取る
(1)神経伝達物質の受容体の反応を高める
(2)神経伝達物質の受容体の数を増やす
などが考えられます。
現在、認知症治療薬として最もよく使用されているドネペジル塩酸塩(商品名;アリセプトなど)は、脳内でコリンエステラーゼという酵素の働きを阻害し、神経伝達物質の代表格「アセチルコリン」の分解を防ぐ働きがあります。([1]の(2))
一方、認知症治療薬開発の段階で発見されたPOホスファチジルコリン・DLホスファチジルコリンは、神経伝達物質のアセチルコリンの量を増やし([1]の(3))、さらにはアセチルコリン受容体の働きをよくする([2]の(1))働きがあるという研究結果が出ています。これらのことからドネペジル塩酸塩とPOホスファチジルコリン・DLホスファチジルコリンとの併用によって、さらに有用であることが予想されます。
実際に、ドネペジル塩酸塩とPOホスファチジルコリン・DLホスファチジルコリン配合サプリメント「エグノリジンS」とを併用して認知症が改善された、80歳女性の例をご紹介します。
ある日「かばんが無くなった」ということで朝から探して泣いていたところを家族が見つけたことをきっかけに、日に日に様子が変だと周りでも感じるようになってきたそうです。
また、買い物に出かけては、同じ商品を考えられないくらいにたくさん買ってきて家族に見せてはニッコリ笑うこともあったそうです。
その後は、毎日のように「通帳が無くなった」、「印鑑が無くなった」と言い、家族が隠したということで家族に八つ当たりするようになり、さらには自分で鍵屋さんを呼んでは部屋のカギを毎日変えるようになりました。
業者の方もさすがに、何度も鍵の交換が続くと普通じゃないと感じるようになり、家族に連絡をとってその事実が判明したそうです。
そこで大学病院を受診させたところ「軽度認知症」と診断されドネペジル塩酸塩が処方されたそうです。
この時の家族の感想は「これで軽度なの?中等度になるとどうなるのだろう」と不安の方が先に立ったそうです。
ドネペジル塩酸塩を飲み始めて数か月、まったく状態は変わらない様子でしたが、その時に当社に相談を頂き、「エグノリジンS」を飲用することになり、その3~4ヶ月後にうれしい報告が舞い込んできました。
「以前のように普通の生活ができるようになった。今までの認知症の様子が嘘のようだ」との事でした。
これはほんの一例に過ぎませんが、作用機序から考えても、併用することにより一層有用性が高まることが期待できるように思いますので、参考までにご紹介させていただきました。
「医薬品を使用するか、サプリメントを使用するか」というようにどちらか一方を選択しなければならないことはありません。上記の例のように併用することにより有用性が高まることも大いに考えられます。がん患者さんの場合は、健康食品を併用することで抗がん剤の副作用の軽減に大いに役立っています。その方にとって一番良い選択肢を考える、それが統合医療(補完代替医療)の基本的な考え方だと思います。
病気と深い関りのある「慢性炎症」に要注意!
「寝ても疲れが取れない」、「何もする気にならない」、「なんとなくしんどい」など、体調がすぐれないことってありませんか。
これらの症状で受診したとき、その原因が特定できずに「不定愁訴」と診断される場合もありますが、その原因は「慢性炎症」が関与しているかもしれないということが最近の研究で明らかになりつつあります。
「炎症」といえば、一般的には「急性炎症」のことを指す場合がほとんどです。
一方「慢性炎症」は、何らかの病気が見つかるまで気づくことがない場合が多いことから、「サイレントキラー」とも呼ばれています。
通常、体内での炎症の有無を確認するために、「CRP」という血液検査の数値で判定します。
基準値は検査会社によっても多少異なりますが、0.5以下となっています。
体内で急性の炎症症状がある場合は、0.5より高くなります。
一方、慢性炎症の場合、CRP検査では0.5以下ですので、見逃されてしまうことが多く、慢性炎症をみつけるためには、「高感度CRP検査」を実施する必要があります。
「高感度CRP検査」は、その名の如く通常の検査では測定できないところまで詳細に検査できます。
慢性炎症は、万病のもとと言われ、「がん」、「糖尿病」、「脂肪肝」、「認知症」、「肥満」、「慢性疲労」、「うつ病」、その他の多くの病気と関係があり、腸内から起こった炎症が生活習慣病につながっていくことから、腸内環境を整えて腸内の慢性炎症を抑えることは健康を維持する上で大切と考えられます。
ところで、「慢性腎臓病」も慢性炎症が原因となっていると言われていますが、最近のホットな話題として、麹菌発酵大豆培養物含有サプリメント「イムバランス」の摂取で、慢性炎症を抑え、「慢性腎臓病」に有用である可能性を示唆する論文が発表されました。
「慢性腎臓病」は、末期腎不全に至るリスク因子のひとつで、日本腎臓学会のガイドラインによれば、我が国の成人人口の約13%が「慢性腎臓病」と言われており、腎臓透析を実施している人口は、2017年現在でなんと33万人を超えていると報告しています。
未だに「慢性腎臓病」の治療法が確立していない中、麹菌発酵大豆培養物含有サプリメント「イムバランス」が、炎症性サイトカインなどの各種の血中バイオマーカーの有意な抑制、腸内細菌叢の改善などにより「慢性腎臓病」の発症及び進行を有意に遅らせる可能性があることを示唆する結果が得られたことは明るい情報のひとつと考えます。
今まであまり注目されていなかった「慢性炎症」ですが、今後の健康長寿のキーワードとして、ミトコンドリアやHSP(ヒートショックプロテイン)とともに、もっと注目されるようになってくるかもしれません。
まだまだ未知の「免疫」の世界~サイトカインを中心に~
皆様は「免疫」とか「免疫力」という言葉を、耳にしたことがあると思います。身近なところでは、コロナウイルス感染拡大防止にむけても身体の免疫力を高めることが大切ということはよく知られていますね。
しかし、実は専門の研究者であっても「免疫」のメカニズムについてわかっていないことがまだまだあるというのが現状です。
本日は、免疫学の中でも「サイトカイン」について、その一部をご紹介いたします。
さて、「サイトカインっていったい何だ?」ということですが、免疫を少しでも勉強されている方なら言葉としては聞いたことはあるかも知れません。
サイトカインは、白血球などから分泌されるたんぱく質の一種で、「インターフェロン」といえばわかる方も多いかも知れませんが、インターフェロンやインターロイキン、TNF(腫瘍壊死因子)などの物質で、サイトカインと一言で言っても、実に多くの種類が存在し、インターロイキンだけでも30種類以上知られています。
これらのたんぱく質が、体内で情報の伝達に関与し、免疫や炎症に絶妙なバランスで作用しています。
例えば、アトピー性皮膚炎の治療を例にとると、現在ではインターロイキン-4(IL-4)とインターロイキン-13(IL-13)をピンポイントで抑制する皮下注射での治療や、IL-4,IL-13、IL-31などのサイトカインの伝達にかかわるヤヌスキナーゼ阻害作用を有する塗り薬など様々な医薬品が開発され、これらは皮膚のバリア機能の低下を防いだり、かゆみを抑えたりする作用を有しています。
アトピー性皮膚炎の患者は、国内では約51万人にも及ぶと言われており、成人になってから発症する例も多く見られていることから、これらの研究の進歩は朗報と言えます。
ところで、風邪をひいたときに眠くなるという経験は誰もがあると思いますが、実はこれも「サイトカイン」が関与しているのです。
風邪の原因となる細菌やウイルスの感染に対抗するため、炎症性のサイトカイン(例えばTNF-αやIL-1など)を産生し熱や痛みが生じます。即ち、風邪をひいて熱が出るという事は、身体が細菌やウイルスと闘っている証拠ともいえますが、そのサイトカインの作用で眠くなることもわかってきたのはまだ数年前のことです。
このように現在医学でもわかっていないことがまだまだ多いのが現状で、今後の研究の進展に大いに期待したいところです。
やっぱり「大豆」は偉いんだ!
2013年2月号で「大豆は偉い」というタイトルで、ダイゼインリッチな麹菌発酵大豆イソフラボンの機能性についてお伝えいたしました。
その時には、次のような機能性をお伝えしています。
(1) アディポネクチンの増加作用や脂肪細胞を小さくすることによるダイエット効果
(2) 更年期障害におけるホットフラッシュ改善作用
(3) 抗アレルギー作用
(4) 受精卵着床改善作用などによる不妊症治療への応用
(5) 乳癌や前立腺癌の予防・改善作用
(6) 突発性難聴や耳鳴りの改善作用
(7) 血中中性脂肪や血中コレステロールの低下作用
(8) 脳梗塞や心筋梗塞の予防作用
その後、2017年11月号で『やっぱり「大豆」は偉かった!』というタイトルで、アルツハイマー型認知症の原因物質のひとつと言われているアミロイドβの凝集抑制作用や長寿遺伝子「サーチュイン遺伝子」の活性化作用、さらには「若返りホルモン」として知られている「DHEA」の上昇作用などをお伝えしています。
この度、その後にニチモウバイオティクス株式会社が行った、ダイゼインリッチな麹菌発酵大豆イソフラボン(Dr.アグリマックス)の研究成果の一部をお伝えさせていただきます。
1.子宮内膜症に対する有用作用
子宮内膜症は、生殖可能年齢の1~10%の女性に罹患する疾患で、主な症状は骨盤痛や不妊があります。京都府立医科大学産婦人科学教室との共同研究により、ダイゼインリッチな麹菌発酵大豆イソフラボンは、子宮内膜症間質細胞の増殖および炎症を抑制すること、子宮内膜症モデルマウスの病変形成を抑制することを見出しました。さらには、ヒトを対象としたパイロット試験が行われ、子宮内膜症患者の月経痛緩和や子宮内膜症性嚢胞径を縮小させたという結果が報告されています。
2.生殖機能に及ぼす影響について
マウスにダイゼインリッチな麹菌発酵大豆イソフラボンを混ぜた餌を与えたところ、加齢マウスの発情頻度を増加させ、胚着床数及び重量が若齢マウスと同等だったことが麻布大学との共同研究で明らかになりました。晩婚化などで出産の高齢化が進み、不妊治療に大きな関心が集まる中で有用な結果と言えるのではないでしょうか。
3.COPD(慢性閉塞性肺疾患)予防効果
大阪市立大学大学院医学研究科呼吸器内科学の研究で、ダイゼインリッチな麹菌発酵大豆イソフラボンがCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の予防効果を有することが明らかになりました。
4.筋萎縮軽減効果
マウスを用いた東京工業大学との共同研究で、ダイゼインリッチな麹菌発酵大豆イソフラボンは、神経切除に伴う筋萎縮を軽減することを報告しています。超高齢化社会を迎えるわが国で、ロコモティブシンドロームのひとつである加齢性筋減弱症(サルコペニア)が社会問題になりつつあるなか、サルコペニアを軽減する可能性に期待が寄せられています。
以上のように新たな研究成果が次々に報告されていることから、『やっぱり「大豆」は 偉いんだ!』と思うのは私だけでしょうか。
※ここでお話している「大豆」は、ダイゼインリッチな麹菌発酵大豆イソフラボンの ことです。
アスピリンの新たな可能性
アスピリンと言えば、解熱・鎮痛薬の代名詞ともいえる医薬品で、知らない人がいないくらいに有名な薬ですね。
アスピリンの源流は紀元前に遡ります。紀元前400年ごろの記録では、ヒポクラテスがヤナギの樹皮を熱や痛みを軽減するために用いたという記録が残っています。
もちろん、この時はどうして熱や痛みを抑えるのかというメカニズムはわかっていませんでした。
また、中国では歯痛にヤナギの小枝を歯間にこすりつけて痛みを緩和させていましたが、これが「つまようじ」の始まりと言われているお話も有名です。
実は、アスピリンの解熱・鎮痛作用のメカニズムがわかってきたのはまだ最近のことで、1971年にイギリスの薬理学者が、アスピリンの解熱・鎮痛作用は「プロスタグランディンの生合成を抑えるため」ということを解明したことによります。
この研究成果は、ノーベル医学賞の受賞にもつながりました。これほど長い期間において、世界で広く使用されながら、メカニズムの解明に至っていなかったものだったということは驚きですね。
そのアスピリンは、1970年代の後半から、血小板の凝集を抑制する作用があることから、低用量のアスピリンが血栓予防に使用されるようになってきました。
しかし、最近では血栓予防効果よりも、消化管出血などの副作用がクローズアップされるようになり、今では血栓予防の目的で使用されることも少なくなってきました。
ところが、アスピリンは、またまた新たな可能性で脚光を浴び始めています。これほど長い間にわたって注目される薬も珍しいと思いますが、いま新たな可能性によって「がん領域」の分野で注目されています。
1988年には、オーストラリアの学者が、アスピリンを服用している人の大腸がんの罹患率は服用していない人に比べると40%も低いことを発表したことをきっかけに、世界中の研究者たちがこぞって研究を開始しています。
最近では、大腸がんの他にも、すい臓がんリスクを低減させるなど、アスピリンと様々ながんリスク低減の関係について研究が継続しています。
最近では、がんと炎症の関係が密接であることが知られてきましたので、もしかするとアスピリンの抗炎症作用が、がんリスクの低減に良い結果をもたらしているのかもしれません。
そのうえアスピリンは、アルツハイマー病や糖尿病領域でも研究が行われているという記事もありましたので、アスピリンは、もはや単なる「解熱・鎮痛剤」とは言えない薬となってきました。